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・
そんな偽りの日常は十日と続かなかった。
「ただいまー…」
会社帰りを装いスーパーの袋を提げ帰宅する
と、驚いたホッパーが涼介の肩に飛び乗った。
涼介「……おかえり」
「お、遅くなってごめん。帰り際に急用頼ま
れちゃって…お腹すいたよね？ 急いで支度す
るから」
心なしか"おかえり" の声が低く感じた。
秋の公園ってやつは香りが強い。
服の繊維にまで染みついたキンモクセイの香
りを隠したくて、買い物袋を提げたまま足早
に寝室に向かう。
＊＊＊
トントントントンッ…
いつもならすぐに手伝いに来るのに
今日は帰宅時に一言、交わしただけ。
トントン……トン
カタン
虚しく鳴る包丁の音は
空虚な胸の内そのものだった。
さっきから耳鳴りがおさまらない。
キィィィィィィィン…
ほら、また。
もう…もうやめて…
ウザいって言ってるじゃない。
どうしてわたしなの？
どうしてこの耳で鳴るの？
けたたましいモスキート音に
顔を歪め塞いだ耳。
＊＊＊
ニャァン…
ようやく耳鳴りがおさまったのは、遠慮がち
に声をあげたホッパーの気配に振り返った時
だった。
「………涼介」
・
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作者名：知夏
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/972e809caf1/
作成日時：2016年3月18日 23時
