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履歴書の名前が偽名であることを承知で彼を
雇い入れてくれたのは、身寄りのない老人が
終の住処として暮らす小さな福祉施設だった。
身元の不明瞭な彼がどうして…
ずっと疑問だったけれど
"ヒトの幸せのために働いて稼いだ金を大切な
ヒトとの幸せのために使いたい"
オーナー夫婦が涼介の採用をその場で決めた
理由がこの言葉にあったことを後になって知
り、やるせなさから胸に毎晩のようにわたし
は枕を濡らした。
＊＊＊
適合者への道筋に光が灯り、
暗雲の立ち込めていた閉鎖的な世界から
わたしたちは…
太陽とともに季節の移ろいを感じ取れる開放
的な世界へと
二人で
ゆっくりと歩を進めるはずだった。
……はずだったのに。
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作者名：知夏
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/972e809caf1/
作成日時：2016年3月18日 23時
