【聖F学】エリンジュームの花束を。【派生作品】 (ページ7)

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「………あながち、間違ってないと思うよ」

「え？」

少し考えるように間を開けてから、ナハトはショコラに一切顔をむけず、月だけをまっすぐ見て話す。
その横顔は、何故か悲しそうなきがした。

「ここの奴らは、紅い月は不吉だ～！とか言ってるけど………、関係ないよ。ただの迷信」

「へぇ…なんでですか？」

少しの間沈黙が流れる。別にナハトは話したくない訳ではない。言葉を探しているのだ。
暫くして、ナハトは横目ショコラを見ながら何故かいつもより優しく聞こえる落ち着いた声色で話した。

「…オレは今まで、何十回も何百回も紅い月を見て来てる。当然、その迷信も本当かなって試したよ。…何回もね。まるっきり嘘だけど。そんな迷信…」

そう。彼は知っている。
今まで何十回も何百回も魔法を使えるように練習してきた。手段は選ばなかった。当然…、紅い月の下で練習だってした。
何をしたって、才能がないものはないのだ。

そんな思いを隠した言葉選び。
ナハトは嘘はつかないが、自分を隠すための嘘はつくらしい。

「光にも通りやすいものと通りにくいものがあるのは知っているか？」

「あ…本で読んだことあるかも…！たしか、青が弱くて、赤が強いんですよね？」

「そう…。最近、あっちの方で大規模な山火事が起こったらしいんだよ。」

ショコラはそれとこれの何が関係あるんだという顔でナハトを見た。
「間抜けな顔。」と呟いてナハトは話を続けた。

「山火事や噴火で大気中に広がったチリや水蒸気が、青い光が通るのを邪魔するんだ。だから、通りやすい赤い光だけが残って、赤く見える……、そんなもんだよ」

そう、そんなものなのだ。
まァ、魔力が上がった気がするー！って調子乗る奴もいるんだろうけど。とナハトは上を向いて寝転がり、そのまま静かに目を閉じる。

「物知りなんですね！」

「別に。…迷信なんて信じて、阿呆みたいだな」

ショコラに向けているようで、時分にも向けているようだった。毎日の事だが、現に先程魔法の練習をしていたのだから。
心のどこかで信じたいと思っているのだ。

「(…オレが、1番阿呆じゃん)」

心の中で小さく呟いて、ナハトはそのまま、徐々に眠りに落ちていった。