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あぁ、ショコラがそうやって笑うから。俺はまたショコラの愛情に溺れていくんだ。
…甘やかさないでよ。
そんなことを思う反面、ナハトはショコラをきつく抱き締める。
愛しい、この世界一大切な、大事な大事なショコラを離したくない。他の人に触らせたくない。
出来ればずっと側に居て、ずっと手を握っていたい。…けど今は叶わないから。
「うん。いつか教える……それまで待ってて。それでその時は――――…」
『俺の全部をショコラにあげる』
その時はきっと、何があってもショコラと居れる覚悟がナハトの中で出来たとき。身も心も、全部ショコラに預けてもいいと思えたとき。胸を張って、愛してるって言えるとき。
それはもうすぐかもしれないし、遠いかもしれない。けど、ふたりの中でその未来はくっきりと見えていた。
「…うん。待ってる」
「……あーもう無理…」
頬を少し赤く染めてふわ、と笑ったショコラに胸が高鳴って、引っ張られるようにナハトはショコラに何度もキスをした。ショコラから唇を離す合間に、「好き」と小さく呟きながら。一度目は額に、流れるように鼻に、首を傾けて頬に、少し前のめりになって耳に、したに下がって首筋に、ショコラの手をとって手の甲に。
最後は唇に。
怒濤のキスの雨に、ショコラは呆けた顔でナハトを見上げた。
「ふざけんなよ。ショコラのせいでキスしちゃったじゃん」と少し不服そうにナハトはぷいっと反対側を向いて歩き出してしまった。耳まで赤いのを隠しきれていないナハトを見てくす、といとおしそうに見つめて笑うと追い掛けた。
その日から暫く過ぎて、三日月が細くなり、ニタニタと笑って見える今夜は、ナハトもニタニタ笑っていた。そんな昼間までとは全く別で余裕綽々としたナハトにショコラは「えぇ…」と文句ありげである。
「この間色々あったけど、ショコラになら話して損はないと思うんだよ。つか話すなら早いほうがいいかなぁって。善は急げ、って言うらしいし」
「にしても早いよ〜…」
ニコ、と優しく微笑んでナハトは話し出した。
初めて会ったとき、ショコラに何故回復魔法を使えなかったか。
そこからだった。ナハトは目を逸らすことなく淡々と口から言葉を溢した。
自分は生まれつき魔力の流れが他人とは違うこと。他人に容易に扱うと危険なこと。
自分には魔法の才能がないこと。
ペラペラと喋るナハトに半ば混乱しているショコラにナハトは言った。
「全部あげるから、全部受け止めて」
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