【聖F学】エリンジュームの花束を。【派生作品】 (ページ17)

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『醜いアヒルの子』
昔、唯一オレに色々な事を教えてくれたばあちゃんが、よく読んでくれたっけ。

他のアヒル達と違って真っ黒なアヒルは、バカにされるのに耐えられなくて、苦しくなって、殺してもらおうと白鳥達のいる池にやってきて、そこで汚れがとれて、自分が美しい白鳥だと気が付いた。

でもオレは汚れてるだけじゃない。『もともと』醜いんだ。だから幾ら洗ったってショコラのように綺麗な白鳥にはなれやしない。
魔力の流れがおかしくて、魔法の才能もなかったオレは、神に愛されなかった落ちこぼれだ。今はそれを無理やり隠しているだけ。

いつか皆それに気付いて離れていく。
でも、それでいい。孤独なくらいが、俺にとっては丁度いい――――――――――………

不意に目を閉じたまま眠りから覚めて、誰かに頭を撫でられている気がした。誰だろう。
魔法で自分たちを俯瞰する。そこに居たのは…

「ショコラっ、なんで来た………！」

唐突にガバッと起きたオレにショコラは驚いて肩をビクッと震わした。思えば、初めてショコラと呼んだかもしれない。
なんだか落ち込んだ様子のショコラはおもむろに口を開いた。

「な、ナハトさん…が倒れたって、聞いた、から……」

ここは医務室だったらしい。
目が覚めた医務室は、相変わらず薬臭くて、見が回りそうだった。鼻をつく薬の臭いは、今は気持ち悪さを逃がしてくれているようだった。

ショコラを見てみると、少し目が腫れていた。
泣いた跡だ。昔はよく泣いていたからわかる。
オレはそっとショコラの頬を撫でた。ついでに涙も拭き取った。

「…………ごめんな。オレ、最低だよな」

「え………」

「…そんな事言ったら、アンタが…ショコラが傷付くって、わかってたんだ。知ってて…………言った。ごめん」

「でも、なんで…」

「本当は………、ショコラじゃオレと釣り合わないんじゃなくて、『オレじゃ』ショコラと釣り合わないんだ。それに…多分、オレと居てもまた傷付くだけだから……、いっそ嫌って貰えればって」

胸が痛いほど締め付けられて苦しかった。ショコラともっと仲良くなりたかったから。オレは自分にまで嘘を吐いて偽っているんだ。
本当は本当は本当は。ショコラに嫌ってなんて欲しくなかった。その綺麗な目で、下賎な穢れたオレを見て欲しい。

「そんで、本当は――――――――――――」

ショコラの耳元で呟いた。
ショコラは嫌いじゃないってこと。…寧ろ好きだってこと。