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突然の事に少女は戸惑う。ナハトは「乗るならさっさと乗って」と面倒臭さを含んだ目で睨んだ。
その圧に押し負けたか、少女はナハトの背中に恐る恐る背中を預けた。その瞬間、視界は高くなる。
「オレはナハト=モーントズィッヒェル。ロッソカレッジの6年。ヴァンパイアとか呼ばれてるけど、人間ね。アンタは」
「わっ、私はしょ、ショコラ・マリンスノーです…えっと、アズーロカレッジ6年生です…同い年だね、よ、よろしく…」
「そう。よろしくはしないけど」
そう話している間にもナハトはスタスタと足を進める。一刻も早くこの人から離れたい、と思っているのだ。
神を信じている人に興味もなければ、好意を寄せる気も、よろしくをするつもりもないのだ。
長い廊下の中で、冷たい沈黙が流れる。
ナハトは牙の光る口を開いた。
「アンタ、アズーロカレッジとか言ってたけど、やっぱ魔法とかできるの?」
やはりナハトは振り返らない。しかし、その目は射抜くようにショコラを見つめていた。
話しかけられたのが少し嬉しいのか、ショコラは声をちょっぴり弾ませて答えた。
「む、昔から氷の魔法が得意で…、でも大体の魔法は出来るかなぁ………」
「………そう。流石だね」
「ナハト…さんこそ、ロッソカレッジだし」
「…別に」
瞬間少し眉を潜めたナハトにショコラは違和感を覚えた。が、保健室の前で降ろされ、さっさとナハトは歩いてゆく。風のように去っていったナハトをショコラは首を傾げて見ていた。
それから数日が経つ。その日は雨で、しとしとと雫が空から降ってくる。空は灰色に染まり、暗い。
しかしナハトには好都合のようで、無表情だが少し上機嫌そうに廊下を歩く。
角を曲がろうとすると、誰かにぶつかりそうになった。相手は「きゃっ」と声を漏らして1歩下がる。
その相手は見覚えのある顔で、つい最近ぶつかったショコラだった。
「あ、こんにちは…」
「足の調子は」
「も、もう大丈夫!」
「あっそ」
素っ気なくショコラの横を通り過ぎ、靴を鳴らして廊下を歩いていくが、不意に、ピタリと止まって振り返った。
「授業始まるからさっさと戻った方がいいと思うんだけど。アンタどこ行くの?」
「えっ…教室…」
ナハトは方向音痴かよ、と溜息を付くと、「そっち逆」と言って歩いていった。
ショコラは「ナハトに着いていけばちゃんと行けるかも!」とナハトの背中を追った。
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