◆「H△PPY Halloween!!!」 ページ6
*
二回。手の甲と扉がぶつかり合う音が、広い廊下に響いた。ノックしたものの、その内側からの返答は無い。
トールは、扉の向こう側に居る筈の主に、扉越しに声をかける。
「陛下、起きていらっしゃいますか？」
またもや、陛下──ロキの返答は無い。寝坊とは珍しい。トールは「失礼致します」と言いながら、ドアノブを捻った。
寝室というには広すぎると感じる部屋の奥では、大きなベッドが存在感を放っていた。トールはベッドに近付き、天蓋を片手で避けながら顔を入れる。
「…陛下？」
トールは目を見開いた。ロキが居ない。一度ベッドから顔を出してもう一度見てみても、居ない。ブランケットとシーツの間にある筈の膨らみは、存在しない。
思考を巡らせる。ロキがベッドにいない可能性として考えられるのは三つ。
� ◆擺�に起床しており入れ違った】。広い城の中だ、気紛れで違う通路から食事へ向かわれれば気付かないのも当然だろう。�◆◆攵襪�ら抜け出した】。彼の放浪癖は、言わずもがな有名だ。��、【何者かによって拉致された】。圧倒的な技術力を誇るアースガルデン帝国の城に限ってそんな事は無いと信じたいが、もし。もしも、そうだったとしたら。
トールは、ロキを探す為振り返った。その時だった。
「
何者かが襲い掛かる様にして腕を上げ、大きな声を出す。驚いたトールは、バランスを崩してロキのベッドに尻餅をついていた。
トールの驚いた表情を見て、驚かせた張本人、ロキは、愉快そうにくつくつ笑う。
「あっはっは、間抜けな表情だなトール！ いい気味だ！」
楽しそうに笑うロキを数秒間見上げて、トールはロキの悪戯にまんまと引っかかった事を理解した。何か部屋の物体に変身して、起こしに来るのを待っていたに違いない。
なんだか悔しい気分だが、それよりも職務を全うするという使命が、トールにはあった。トールは立ち上がってベッドの皺を直すと、ロキに挨拶した。「おはようございます、陛下」
ロキもまた、挨拶を返す。「おはよう、トール」
寝室から出た廊下を並んで歩いていると、ロキは気持ちが良さそうに伸びをする。
「朝からお前に悪戯できて爽快だよ。やはりいつの年もこの日は悪戯日和だな」
「悪戯日和？」
不思議そうにするトールを横目で見て、ロキは眉を上げて呆れた表情を演出すると、恐らくろくな事を考えていない時の笑顔を浮かべて言った。
「忘れたか？ 今日はハロウィンだぞ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
