【Mostro Mask】しあわせの箱庭【派生作品】 (ページ10)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:1,973 hit

ページページ10

*

「また泣いてんの〜？今度はどうしたの？いじめられた？」

　あの日と同じように、日陰に蹲ってナターリアが泣いている。だから、セオはあの人同じように隣に腰を下ろした。ナターリアの真似をして蹲り、横からナターリアを見る。
　すると、ナターリアは嗚咽の合間に、か細い声で語り出した。

「は、花かざろう、としたら、か、びん…わっ、ちゃって…花も散っちゃって…わたしが、転んだせいで……」
「あぁ、そんな事。なんも泣くこと…」
「あるよぉ、だって…セオく、んが…似合うって言ってくれた、お花、なのに」

　一瞬、時が止まる。
　──あぁ、また馬鹿な事言ってる。同じ花なんていくらでもあるのに。そんなたった何輪か散ったのを気にしてどうするのさ。

「お花ならまたあげるよ？」
「特別だったんだもん…!!」
「あらー…」

　やけくそのようにそう吐き捨てて、ナターリアは引きこもる。
　「しょうがないなぁ」セオの目の前には、いつかの自分とナターリアがいた。君はお馬鹿さんだから、どう笑うかも分かるんだ。

　そこら辺に咲いていた小さい花を摘み取って、茎を編む。リング状にして、形を整える。久しぶりに作ったから不安だったが、あの頃より綺麗にできた。

　花の冠をそっとナターリアの頭に乗せる。
　ナターリアはそれに気が付いて、あの時のように顔を上げた。

「ナターシャちゃん、ちっちゃい時も花瓶割って泣いてたんだよ。その時ね、ナターシャちゃんが〝王子様が迎えにきてもいいようにならなきゃ〟って言ってたの思い出してね、お花の冠作ってあげたの。そしたら、ナターシャちゃん、嬉しそうに笑ったんだよ」

　ナターリアは指先で花の冠に触れながら、目をぱちくりさせる。

「お姫様にもなれて笑えるなんて、一石二鳥だねぇ。ね、嬉しいでしょ？嬉しい時はニコニコ笑うんだよ」

　そう言って笑いかけると、ナターリアはにっこり笑った。
　「ありがとう」そう言いながら涙を拭い、「私も作ってあげるね」と花を摘み始めた。

「オレは冠いらないよ～？」
「でも王様になりたいんでしょ？私が王様にしてあげる！」
「そお？」

　ありがとうね、ナターリア。
　小さく呟くと、聞き取っていたのかナターリアは「どういたしまして！」とはにかんだ。