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*
ナターリアのすすり泣きが聞こえる。
なんで泣いてるんだろう。そう思いながら、セオはその声が聞こえる方へ走っていった。孤児院の裏に来ると、セオにいじめられている時のように蹲って泣いているナターリアがいた。
「ナターリア、どうかした？」
「…っ、セオくん…っ、来ないで…またいじめるでしょ…？」
「は？ 喧嘩売ってんの？」
確かにからかってやろうと思って来た。けど、心の片隅には、いや、その「からかってやろう」の裏側に張り付いているのは、心配だ。
「オレ、ナターリアになんかしたっけ」
「…してない……」
「ふーん、じゃあなんで泣いてんの？」
土が湿っていたが、そのまま尻を付けて隣に座る。
ナターリアは嗚咽の合間に、か細い声で語り出した。
「ば、バルカさんが、大事にしてた、か、びん…わっ、ちゃって…わたしが、転んだせいで……」
そんな声じゃ聞こえねえよ。
そう思いながら、「へぇ」と適当に相槌をうつ。花瓶を割ったからなんだ。割れ物なんだから割れるに決まってるだろう。
けれど、泣き止ませてあげなきゃ。いつもだったらしないけど。
「(どうすればいい？ カイみたいにギュッてすればいいの？ それともルナみたいに撫でればいい？)」
ナターリアに何かを与えようとして浮かせた左手は、行く手をなくして地面に引き戻された。
皆みたいに優しくなれば、君は笑うの？
「…オレにいじめられてもいないのに、泣いちゃダメだよ」
本当は誰に泣かされていたってどうでもいいが、泣き止んでくれるように精一杯の言葉を喉から捻り出した。
セオは近くに咲いていた小さい花を摘んで、何も言わずに編む。ナターリアは泣く事に夢中で気付いていないようだ。綺麗な円になった花の冠を、ナターリアの頭に被せる。その感触で、ナターリアは顔を上げた。
「…オレ知ってる、よ。王子様に迎えに来て欲しい…んでしょ？ こうすれば、…お姫様になれる、ね」
自分の思う誰よりも優しい口調で、自分の思う誰よりも優しい笑顔で、ナターリアの顔を覗き込んだ。
「これ、なぁに？」
「はな…お、お花の冠」
「わぁすごい…！ セオくんすごいね！ 私にも作り方教えて！」
すると、ナターリアは花が咲いたようににっこり笑った。笑って持ち上がった目じりから、最後の涙が流れ落ちた。
あぁ、君はこんなことしたら笑うんだ。そっか。
「いいよ。でも�爛淵拭璽轡磴舛磴鶚瓩砲任�るかなぁ」
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