ページ ページ2
.
「お母さん!! どこ！ ねぇ!!」
外へ出た後、すぐに中へ戻ろうとしたけれど、こういう時だけ馬鹿みたいに優しい大人達が、中へと入らせてはくれなかった。
無理やりでも中へ戻ろうとする私に、若い男性がこう言った。「大丈夫、きっと無事だよ」けれど、それが最悪の嘘である事が、直感で分かっていた。
だって、だって──お母さんが姉ちゃんを守るように抱きすくめているのが、その2人を更に守るように立つお父さんが、最後の最後に見えたから。
嫌だ嫌だ嫌だ、死んじゃったら。これからどうすればいいんだ。
足の力が抜けてへたり込む。
「(早く来てよ、使者団──)」
そう思った時、不意に、黒いマントが横を通った。背中に掲げられていたのは、使者を意味する「messenger」の「M」。その勲章は、紛れもなく待ち望んだ使者団のものだった。
──そう言えば、私も使者だった。そこで、私は思い出した。
小さい頃に教えて貰ったのは、私が“音の使者”という事と、使者団へ入団できるという事。お父さん達は「危ない仕事だし、自分の好きな事をして欲しい」と言って、私が使者である事を気にしなかった。
音を操った所で、人は助けられない。なんて役立たずな能力だろう。
けれど、彼らはきっと違うんだ。優秀で強い使者団。使者団には医療に詳しい人達もいると学校で習った。
きっと
私は震える拳を握って、皆の無事を祈った。
何十分経ったか分からない。警察によって貼られたテープの向こう側で、私は一人ずっと立ち竦んで待っていた。人混みの中皆を探し回って、行き違いになったら心配させてしまうと思ったからだ。
何処かで歓声が上がる。息を切らした使者団が、職員と話しながら出てきた。──魔獣を倒したんだ。
向こうの方に、使者団に逃がされた人達がいるのが見えた。皆がいるかもしれない。私は安堵の涙で視界が霞む中、皆に抱きつく為に、テープを越えて走った。警官の止める声が聞こえたが、そんなのどうでも良かった。
「良かった」「無事だったんだね」そんな喜ばしい声が聞こえる人混みに向かう途中、不意に救急隊員にゆっくり運ばれる担架が、横を通り過ぎた。
私はそこで立ち止まる。顔が、お父さんに似ていた気がする。
──いや、そんな筈ない！ 使者団が助けてくれた筈だ。そう自分に言い聞かせたけれど、次々と横を通り過ぎていく亡骸は、紛れもなく
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「派生作品」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
