掃き溜めの星。

No.148 ページ49

色とりどりに染まり上がる新しい世界を焦点も曖昧なまま見渡す。晴れ上がった世界の夜明けも、子供達の笑顔も、舞う花弁達も、何処か自分に似ているような気がした飛んでいくあの黒い鳥達も。…親友であり、この新しい世界の主であろう隣の人間も、自分も。


「綺麗だな。まだまだだけど」


全部全部未完成で、まだ何も完成していない。
きっと、一生出来上がる事なんて無いのだろう。それでも後悔をしたくないと精一杯生きてゆくのだろう。
少し哀れだなと思うけど、哀れで愚かなのは今に始まった事じゃなかった。


ついさっきまで見えていた気がした星も、いつの間にかいなくなっていた。あるのは、滑らかな空色と、絵の具で描いたような雲だった。
星だってずっと見えている訳では無い。それは自分の見出す答のようで、見えては消える。見えるのはつかの間。
その答に手を伸ばして、背伸びして、飛び跳ねて、やっと掴んだそれを、きっと離してはいけない。


この空みたいに心が綺麗で、海のように深く広かったら違う景色を見ていたかもしれない。違う未来だったかもしれない。ひょっとしたら、今までやってきたこと全部間違ってたかもしれない。
それでも、ここからの未来を見てみたい。この目でしかと見届けたい。


こんな掃き溜めみたいな世界でも、皆それぞれ輝いている。
暗い、真っ黒な空を照らしてくれる、今の光を。人を笑顔にできる力をもっている、大好きな星々を、大事に守っていく。


ヒーローごっこなんかじゃない。悪役でもない。正義のヒーローでもない。まだ俺達は何者でもない。何者でもないって事は、何者にでもなれるってこと。1から始めるってことは、100よりも1000よりも行けるってこと。
でもやっぱりヒーローになりたかった。じゃあ皆でなろうじゃないか。新世界のヒーローに。


正義のヒーローじゃなくてもいい。きっと、正義のヒーローにも成りきれないだろう。
他でもない、君(だれか)のヒーローになろう。


今も昔もこれからも、ずっと仲間でいたい皆も、これからきっと手を取り合える、敵だった皆も、皆違う色を持っている。
皆だけじゃない。ここにいる未来の小さな芽達も、大人になった大樹も、数え切れない数の色を持っている。それこそ、星を数えるような量だろう。


まだキャンバスには何もない。色さえ付いていない真新しくて、青臭い世界。
そんなつまらない世界に、俺達だけの、彩りを。

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