検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:12,528 hit

No.138 ページ39

終わったんだ。
そう悟るには十分過ぎる程の静寂が、東京のそれはそれは小さな秘密基地の跡、集結した白と黒に混じり合う色彩豊かな瞬き達を優しくも厳かに包んでいた。
雲によって蓋をされた空は緩やかに明るくなっていく。新たなる世界の幕開けを知らせる神々しいまでの自然光を背負って、夜は確実に開けていく。

医療部隊拠点。ラビッシュもレブルも忙しなく動く医療の最前線に居た私だったが、結局碌な仕事も出来ず、只立ち尽くすばかりでこの戦争の終結を見る事となった。
とても悔しい気持ちで一杯だったが、黒瀬さんと麗華さんの一言でその後悔の念はあっさり捨てる事に成功した。
そうだ、今度は私達がこの世界を創って行かなきゃと思った矢先、奮い立った勇気は唐突に崩壊する。

──これからどうすれば良いんだろう。私達は何処へ向かえば良いのだろう。
漠然とした先の見えない不安が腹の中をぐちゃぐちゃと掻き乱す。その気持ち悪さに嘔吐きそうになり、胸の辺りの服を皺も構わず引っ掴んで蹲った。
怖い、怖い、怖い。
私と言う人間の愚かさを改めて思い知った様な、何も考えてこなかった綺麗なままの自分の姿に眩暈を覚える様な、雲の隙間から覗く美しい柱に心を踊らせる様な──ありとあらゆる感情が四方八方から襲って来て気持ちが悪い。
嗚呼、やっぱり私は駄目な子だ。皆手を取り合って前へ進もうって時に、弱虫な私はいつまで経っても成長しない様だ。
そんな私の背中をあやす様に撫でる感触に顔を上げる。すぐ目の前には涼しげな青を帯びる穏やかな瞳。

「大丈夫? 調子悪い?」
「絢音先輩……」

先輩の優しい笑みに幾分か気分が楽になる。
そうだ。怖くても向き合わなきゃ、それこそ世界の終わりだ。
大丈夫です、と言って、意を決して立ち上がった。顔が引き攣る。手足が震える。本当に情け無いと思いつつ、今度こそ私は真っ新な世界で再び生きて行くんだと伊達眼鏡を外して、真っ直ぐと黒瀬さんの背後に鎮座する荒廃した真っ新な景色を見据えた。

ふと、視界の端に補色が混じるのを見て、視線を外す。緑が映えるその姿に微かな赤黒さが目を惹いた。
(あの人は……)
私が最も恨んでいた人の姿がそこにあった。相変わらずオリーブグリーンの髪が無駄に綺麗だ。
しかし、その穏やかな琥珀色の瞳は他の人達とはまた別のベクトルから世界を写していた。歓喜とも絶望とも違う。
これは──

「瑠璃ちゃん!?」

絢音先輩の制止を振り切って、一直線にその人の下へ走り出した。

No.139→←No.137



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.6/10 (19 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
7人がお気に入り
設定タグ:掃き溜めの星 , リレー小説 , オリジナル , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

花梨(プロフ) - 皆さまお疲れ様でした〜 (2018年9月14日 22時) (レス) id: e3aad0174a (このIDを非表示/違反報告)
透明少女(プロフ) - お疲れ様でした!あまり参加出来ずにいて申し訳ありませんでした…!本当にありがとうございました!! (2018年9月14日 21時) (レス) id: 6dddb2cb16 (このIDを非表示/違反報告)
睦都(プロフ) - 初めからずっと見てました!主催者様、参加者様の皆様お疲れ様でした!剣士君たちとても好きです(*^^*)ほんとうにお疲れ様でした (2018年9月14日 19時) (レス) id: 3a040f6594 (このIDを非表示/違反報告)
羊素。(プロフ) - 遂に完結ですか…少し寂しい気もしますが、主催者様、及び参加者の皆様、お疲れさまでした。 (2018年9月14日 5時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - お疲れ様でした! (2018年9月13日 18時) (レス) id: c46d432f11 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:カレーライス x他10人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年8月4日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。