No.126 ページ27
真の狂気とは、時に美しい。
汚れた海のような空から、光り輝く一体の生き物がゆっくりと降りてくる。
それは音の無い声を発して、たった今見てきた地獄のことを、創造主の太刀にとって喜びでしかない惨状についてを伝えた。
彼は微笑んでそれを撫で、手を離すとそれは羽を落として爆発した。彼は歩き続けた。
崩れた鉄と油の地を踏み、灰色に濁った光を引き寄せては弄ぶ。穏やかに散らばった破片は空と溶け合い、かつて乱立していた建物のように地から突き出た。
薄汚く透き通った光の柱が市街の形を作り、その角は沈みかけた陽光を浴びて醜く輝いた。すぐ下では黒光りするぬかるんだ液体が這っている。
この退廃した東京は、彼の目には甘過ぎる毒だった。
楽しげに飛び出し、鋼の山を登り、氾濫した黒い川を越え、生きていたと思われる物質はバラバラにした。
楽しかった。つまりはここは天国だった。蝕みを甘受するなら、天国も地獄も変わらないだろう。結局のところ、幸福も有り余れば毒なのだから。
彼はこの幸福を思うがままに楽しんだ。
しばらくして、彼は辺りを見回し、やがて天から少しの光を呼び寄せた。
光がこの近くにもうヒトは残っていないと告げると、彼は至極満足げで嬉しそうな顔をして、赤くなった服を翻して来た道を辿りだした。弾かれた光は粉々になった。
ひび割れた道を覆う静寂。
硬い靴音だけが響く。
銃声は聞こえない。悲鳴も聞こえない。泣き喚く絶望の声も、憎しみを込めた響きもない。今この場所に苦しみの形は一つも無かった。苦しい日々は血に溶けて消え、優しい雨となって静かに降っていた。彼は幸せだった。
光に満ちた暗鬱な道路を歩けば、地の底から轟く悲鳴のような音の生温い風が吹き荒れ、散らばった白や灰色の塊を転がす。
倒壊した何かはただ無機質に、何の意味も感情も無く、ヒトに組み込まれた死んだ楽しい日々や音楽だけを映し続けた。
傍ら、ノイズに混じって聞こえる虚しい放送はそうではなく、慌ただしい声が避難や集合を呼び掛け、または淡白な声が戦禍の様子を伝えていた。
無駄なこと。足掻く子供を、大人達は皆そう言っていた。彼も知っていた。
悪足掻きなど、無駄なことなのだ。彼はよく分かっていた。そうして彼は至上の笑みを湛え、崩れかかったスピーカーを踏み潰した。
悲しみ憂うという意思は、もはや無かった。血を浴びた手で、綻びた口元をそっと拭う。
彼の願いは叶った。
こうして、業苦に包まれた平和な世界は誕生した。
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花梨(プロフ) - 皆さまお疲れ様でした〜 (2018年9月14日 22時) (
レス) id: e3aad0174a (このIDを非表示/違反報告)
透明少女(プロフ) - お疲れ様でした！あまり参加出来ずにいて申し訳ありませんでした…！本当にありがとうございました！！ (2018年9月14日 21時) (レス) id: 6dddb2cb16 (このIDを非表示/違反報告)
睦都(プロフ) - 初めからずっと見てました！主催者様、参加者様の皆様お疲れ様でした！剣士君たちとても好きです(*^^*)ほんとうにお疲れ様でした (2018年9月14日 19時) (レス) id: 3a040f6594 (このIDを非表示/違反報告)
羊素。(プロフ) - 遂に完結ですか…少し寂しい気もしますが、主催者様、及び参加者の皆様、お疲れさまでした。 (2018年9月14日 5時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - お疲れ様でした！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c46d432f11 (このIDを非表示/違反報告)
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