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□ 第110話 自分と相手の □ ページ10

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「改めましてこんばんは。デウスくんであっていますね? 立花と申します。こちらは帯刀くんです」
「…で? 俺をどうしたい訳?」
「任意聴取ですよ、任意聴取。バラトについて教えてもらいたい事があるんです」
「どうせ殺す癖に」
「あら、察しが良くって?」

 誰にでもそうなのだろう、華穂は丁寧な物言いで話していた。
 先程ドアの隙間から見えた景色は砂利と鉄。恐らく屋外にあるトランクルームだ。デウスは椅子の後ろに回された拳を密かに握る。余裕そうに振る舞ってはいるが、本当は怖くて仕方がない。いつ殺されるか分からない。死ぬわけにはいかない。

 しかし華穂は「いい提案があるんです!」と手を叩いた。

「デウスくんが私達に協力してくれるのなら生かしてあげましょう」
「何に協力しろって? バラトを殺すのをか?」
「ええはい、そうです。あなたにはバラトを誘き出して欲しいんです。あと、バラトについても。あなたとあなたのお兄さんがバラトと交流があるのは確認済みです。卑怯だとは思いますが、バラトに比べればどうって事ないでしょう」

 バラトに何をされたと言うのだろうか、薄く微笑む華穂の裏には言葉に出来ない程の、怒りを超えた憎悪や化け物のような深い感情が溢れていた。やはりバラトを恨んでいるのがバラトを殺したい目的と考えるのが無難だ、とデウスは冷や汗をかきながら思った。

「ここから自力で逃げ出そうってんなら…やめた方がいいと思う。お前じゃ俺らに勝てない」
「…は……?」
「声を聞いてるだけで分かる……お前には“揺るがぬ意志”がない。絶対に譲れないものがない。…お前は意思も志も持たない人形だ。でも俺らには揺るがぬ意志がある……。だからお前に負けるわけねぇ」

 東は耳をほじりながら話す。適当に話しているようには見えないのに、オレンジ色の瞳だけがデウスの黄金の瞳を撃ち抜いて、妙な説得力を与えた。立花は「可哀想」と眉を下げて言った。デウスの表情と言えば、あらゆる不幸や絶望を詰め込んだ様な──苦しそうな表情と言うのが正しかった。デウスの頭の中では、声だけが響く。

“自分の気持ちは、分かっていた方がいいんじゃない?”
“デ……、…はボ…………ち………る?”

“デウス、君はボクの気持ちが分かる?”


「(わからない………自分の気持ちも、相手の気持ちも、わからない)」

 デウスは落胆する様に頭を垂れた。
 どうしたらいいかわからないのに、考えるなんてことできない。

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作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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くろせ(プロフ) - 桐箪笥さん» あぁ! ホントですね!! ご指摘ありがとうございます、訂正致します! (2019年9月1日 20時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - 36ページの違いドロドロは血がじゃないでしょうか?違うのなら申し訳ないです (2019年9月1日 17時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - Noel*26さん» ありがとうございます! やっと出てきましたね〜、ここまで来るまで長かった…(笑) (2019年9月1日 6時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
Noel*26(プロフ) - 相変わらずの早起き更新お疲れ様です( ^ω^)ついに「ストックホルム症候群」という単語が本編に出てきましたね...うー、続きが気になる気になる木です(は?)これからも応援しています( ^ω^)更新がんばって下さいー (2019年8月31日 7時) (レス) id: 3a6dfc07f6 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 桐箪笥さん» ありがとうございます! 頑張ります! (2019年8月26日 22時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くろせ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年7月10日 5時

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