色々なut先生企画・前編【w.r.w.r.d!】 (ページ28)

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ご近所さんページ28

【ちゃんと彼女だから！】

｢行ってきまーす｣
行ってらっしゃい、という母親の声を背に玄関のドアを開ける。そこまで遠くない大学に通う私は、実家に暮らしていた。

駅までの道を一人歩く。あんなに暑かった夏はどこへやら、心地よい風が隣を通り過ぎた。木々たちも色を変えつつある。

｢い゛っ！？｣
気分よく歩いていたというのに、後ろからの衝撃に情けない声を上げてしまった。
｢ふ、姉ちゃんおはよう｣
｢………その呼び方、しないって言ったのに｣
｢いや、懐かしくなって、ね？｣

悪気なくけらけらと隣で笑うこいつは、隣の家に住む鬱くん。

私より一つ下の鬱くんとは小さい頃からの仲で、いつも一緒にいた。鬱くんは私のことを姉ちゃんと呼び、私もまた鬱くんを弟のように見ていた。

そんな彼も今や私の彼氏である。そのとき、もう姉ちゃんとは呼ばない、と言ったのに。この歳にもなって、なんか恥ずかしいじゃん！

｢何考えてんの｣
｢いや、弟が彼氏になるなんて思ってもなかったな、ってね？｣
そう言うと、鬱くんは少し不機嫌そうな顔をした。なんでよ！

｢何、なんで不機嫌なの｣
｢別に不機嫌ちゃいますけど｣
｢その声が物語ってる！｣
｢ていうか、時間やばない？電車普通に遅れんねんけど｣
スマホの画面を見て鬱くんが言う。

｢え、嘘！…ほんとじゃん、でも話変えないで！｣
｢急ぐで！｣

当然のように手を取られ、走り出す。
彼の背丈も手も、私より大きくなったのはいつからなんだろう。何度目かわからない疑問は、もう一度時間を確認した焦りの中に消えていった。