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彼女が居った。
それはもう可愛くて可愛くて、こんな俺でも優しく受け入れてくれて女神のようだった。
浮気に寛容な奥さんが欲しい、なんて俺が口を滑らせたから何時しか彼奴の我儘も減って。俺が敢えて女物の香水を撒いても彼奴は笑顔で「楽しかった？」としか聞かなかった。
俺が口を滑らせて本当の笑顔を消してしまったのに。彼女なりの気遣いであり、彼女なりの尽くし方を自分が苛立ち当たってしまった。
当たらなければ 、今彼奴と俺は一緒に居れたのかもしれないのに。
泣きそうな彼奴に放った言葉はあまりにも残酷で。
「どうせお前も遊んどるんやろ？せやからそんな嫉妬とか出来ないんやろ？」
後悔した。
彼奴をこの言葉一つで傷付け、泣かせてしまったのだから。
俺が、俺が。
とある女に弱みを握られ、仕方なく付き合ったのだ。なのに、その女は満足せず、次はAと別れろ。と。
勿論そんなことなんてしたくないが、色々脅されてしまいまた仕方なく言ったのだ。
「他に好きな人がおんねん、だらだら関係を続けるのもあれやし別れよか」
あんなこと言わなければ、なんて何度思ったことか。忘れるためにしている女遊びももう辞めた、今日この口で謝って、そこでAに永遠の愛を象徴する純白の薔薇を贈るのだ。
だが、上手く事は進む訳もなく。突然トン氏から電話が掛かってきた。内容は教えて貰えなかったが、早く医務室に来い、と。医務室に着き、いざ大部屋に入れば生きているものの白くなったAの姿。
嗚呼、俺のせいや。俺がこうさせたも同然だ。
ごめんな、A。俺のせいで。
せめて、目が覚めた時、俺に対しての記憶は消えていてこんな屑に会いません様に。Aが記憶の消えたAの世界では幸せになれますように。その意味を込めて手に持っていた白薔薇を机に置いた。
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