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『 …私はッ、どうしたらいいのか分からないんです…ッ
生きていく意味が分からなくて…ッ』
私は彼に全てを話していた.
両親は幼い頃に亡くしてしまった.
父は仕事先の事故で、母は病で.
しばらくの間、祖母の元で育った.
唯一、生前の両親と祖母は私の目のことを信じてくれていた.
いつか、目の病気が治った時にとたくさんの色を教えてくれた.
空と海が青いこと、桜の花は桃色、イチョウの葉は黄色や緑色…
四季によって色が変わって、とても綺麗だと教えてくれた.
祖母を亡くしてからは、孤児院に預けられた.
けれど、そこの人たちには目の病気について理解し難いことだった様で
気味悪がったり、意地悪をしてくる人もいた.
そこでの生活は耐え難いものだった.
耐えて、耐えて、時が経つのを待った.
16歳になった年に私はそこを出た.
毎月出される小遣いを使わずにずっと貯めていた.
貯めていることを見つからないように、ひっそりと.
知らない町まで行って、無償の家を何とか見つけることが出来た.
孤児院で貯めたお金ではさすがに家は買えないから.
何十年も人が住んでいない、今にも崩れそうで埃だらけの家.
その立たずまいだから誰も住もうとはしなかったらしい.
でも、直せそうなところは直せそうだった.
掃除や片付けををすれば、まともになった.
歩くたびにギシギシ言うところもあるけれど.
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そこからは今に至る.
目の病気が治ることに半信半疑になりながら生活してきた.
でもいつの間にか治らないという思いの方が強まっていた.
どうせ治らないなら、
どうせ退屈な毎日を過ごすくらいなら__
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雫(プロフ) - 感動して泣いてしまいました。とても素敵な作品ですね!!これからも応援しています。 (2019年11月17日 16時) (レス) id: b93c2cbed7 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ2世 - ハッピーエンドルートを書いて頂きありがとうございます!煉獄さんと主人公が再会して両想いになれたので、嬉しかったし、主人公が色付いている世界を見れて本当に良かったなぁと思います。二人とも幸せになって〜! (2019年11月15日 8時) (レス) id: 66e3f3e997 (このIDを非表示/違反報告)
れこ - 素敵なお話ありがとうございます(ノ_<)もっと煉獄さん読みたいです! (2019年11月15日 4時) (レス) id: f06b0667e0 (このIDを非表示/違反報告)
忠 - コメントしてませんでしたがひっそりと毎日楽しませてもらっていました!素敵な作品をありがとうございました!! (2019年11月11日 13時) (レス) id: ef6d2c5f91 (このIDを非表示/違反報告)
パンな(プロフ) - 切ない…けれど面白かったです!。泣いちゃいました。素敵な作品ありがとうございました (2019年11月10日 10時) (レス) id: 9b4868f67e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まっちゃろん | 作成日時:2019年10月21日 12時