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「そうですか。ありがとうございます」
看護師や患者に話を聞いてみると、どうやらこの場所では建てられてしばらくの頃から妙な噂や事件が起こっていたらしい。夜勤で見回りをしていると廊下の距離が変わる、霊安室の死体が動く、一人でいると誰かの視線を感じる……など、ありふれた怪奇現象があるのだと。他にも患者の不自然な死や行方不明が発生したとか。死を告げる医者の怪談もあったが、医者の正体は謎に包まれているらしい。
土地自体には特に何もおかしな点はなかった。少なくとも不動産は何も知らないようだった。病院が建てられてすぐではなくしばらくしてから怪奇現象が発生したようであるし、怪異の原因は土地ではないだろう。
不動産への電話を切り、時計を見ると五時。夏だから日の入りまでまだ時間がある。はてさてどう時間を潰したものか。
正直なところ、吸血鬼はこんな病院にいるだけで気が滅入って仕方なかった。依頼でなければこんなところすぐに出ていっている。馴染みの友、犬飼にでも電話をしてみようかと思ったが、犬飼は確か今日恋人と逢瀬があると言っていた。邪魔するのも悪い。外に出るのも考えたが、やめた。太陽光を浴びるリスクは必要でなければ避けなければならない。吸血鬼である彼(あるいは彼女)にとって太陽は不死の自分を殺しうるごく僅かな天敵の一つであった。
となるとやはりこの病院で大人しくしているべきだろう。吸血鬼はため息をついた。
牛崎氏が退院するのは明日らしい。その間になんとか怪異の正体について探り当てなければ追加報酬はぱぁだ。たかだか二万円、されど二万円。二万円もあれば近所のスイパラに三回くらい行ける。サービス期間中なら五回。これをみすみす逃したくはなかった。吸血鬼は写真が撮れないため履歴書もろくに作れず、故に無職であり金がなかった。
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