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なぜだろうか、だんだんと散歩の距離が少なくなってきていた。あれだけ煩わしいと嘆いていたじゃれつきもなくなった。犬はベッドに横たわり、ゆっくりと呼吸をしているだけになった。

 何年も経ってようやく大人しくなったとテスは喜んでいた。なぜか固形の餌を食べなくなったために流動食を作ってやらなくてはならなかったが、それでも構わなかった。

「お前も大人しくなったな、最近までやたらと騒がしかったのに」

 無邪気にテスは言う。その声には喜びがあった。ようやく犬が大人になったのだろうと思っていたのだ。

 褒美に何か買ってあげよう。犬が今持っているもののほとんどは犬がまだ幼い時に買い与えてそれっきりのものばかりだったのだ。大人になったお祝いなのだし、豪勢なものを買ってあげなくてはならない。

 犬はテスの様子を静かに見据えていた。しばらくそうして、ベッドの奥からぼろぼろになって穴が空いたテニスボールを緩慢な動きで引っ張り出してきた。

「……ボール遊びはやめられないようだな」

 途端に面倒臭そうになったテスは、それとボールを投げた。狙いは逸れ、ボールはころころと部屋の外へと転がる。扉が開けっ放しだった事を忘れていたテスは更に面倒臭そうにため息をついた。

「待っていろ」

 犬にそう言って取りに向かう。犬はなぜか自分で取りに行かないボールをこちらに見せつけてくるようになっていた。そのたびにテスが投げて、それでも犬はボールを拾おうとしないから、結局テスが取りに行っていた。今回もそうだった。

 廊下に転がっているボールを手に取る。部屋に戻る。犬はいつの間にか眠っている。ぴくりとも動かない。

 まるで死んでいるみたいに。

「まったく」

 テスは眠っている犬のすぐ傍にボールを置いてやった。起きた時にやるための餌を作るために、テスは部屋を出る。

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作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年7月31日 21時

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