「貴方だけの音を」:4 ページ25
その声は___あの日の放課後に聞いた彼の歌声とよく似ていて、でもどこか違う雰囲気を持っていた。
あの日。私達が、初めてお互いのことをしっかりと認識したあの日の放課後。
彼は大切そうに持っていたギターから、自分だけの世界を奏でていた。それに聞き惚れた私は、すっかり彼の虜になって、彼の世界に近付こうとギターを教えてもらった。
あの時から私はもう、彼に恋をしていたのかもしれない。
___そうだ、私が彼に気を惹かれていたのは。
完璧な立ち振る舞いで、周囲を圧倒させるほどの才色兼備。
それでいてなお、心の中に確執した道標…灯がある。そんな私とは対岸に位置するような彼に、興味を持ったのだ。
だけど彼を知るにつれて、その考えは少し違っていたことに気付く。
彼は心の中にしっかりと道標を持っていた。それは確かだった。
だが対岸にいる、というのは間違っていた。
私達は、正反対に位置するように見えて案外似ていた者同士だった。
平等に好き嫌いがあって、趣味が重なって、互いに惹かれ合っていたんだ。
彼が私という人間に興味を持ったように、私もまた彼が持つ世界に興味を持った。
彼は自分の持つ世界を確立させていた。
彼しか奏でることのできない、彼氏にしか歌うことのできない世界。
____貴方だけが持つ、貴女だけの音を。
ハヤトさんがマイクを握り締めて、魂が口から出そうなほど必死に歌っている曲は____あの日の放課後、まだ未完成だと言いながら聴かせてくれたあの曲だった。
聴いたことが無い音や歌詞が加わっている点を考えると、どうやら完成版らしい。
ハヤトさんの歌声は、相変わらず私の心臓を鋭利なナイフの様に射抜いて離さない。きっとそれはこれからも。
____意地悪な人。
私はステージに立つ彼に、少し呆れたように笑いかけた。
彼の顔は、いつもより輝いているように見えた。
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こみ - 私もこの1年間高2A組だったのですごく嬉しかったです!幸せでした! (2021年4月4日 15時) (レス) id: a0adc0f2be (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - ばちぅ兼もてゃさん» こんにちは。コメント、そして読了ありがとうございます!続編の方は別のお話と同時進行の予定ですので、もうしばらくお待ちください。 (2020年6月20日 18時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
ばちぅ兼もてゃ - こんにちは...ばちぅ兼もてゃです...最初から最後まで全部読んでました、執筆お疲れ様でした!続編も楽しみにしてますね、もちろん読みます (2020年6月20日 18時) (レス) id: 603073c1b4 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 蒼渇さん» 蒼渇さん、コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。よければこれからもお付き合い頂ければ励みになります。 (2020年6月2日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼渇(プロフ) - ひぇ…めちゃくちゃキュンって来ました…好きです!!!!!!!無理せず更新頑張って下さい! (2020年6月2日 10時) (レス) id: c685f96854 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊織 | 作成日時:2020年5月30日 14時