「文化祭とほんの少しの魔法」:2 ページ17
「…ここ、本当にいつもの教室ですか?」
私が教室に着いた途端、口からそんな間抜けな言葉が出てしまったのも無理はない。
だって、目の前に広がる教室___もとい、コスプレ喫茶は。
地味な木製扉はレースとリボンでメルヘンに飾られ、室内も壁をぐるりと囲むようにレースで綺麗に飾られていた。
パステルカラーの色合いで書かれた「コスプレ喫茶」という文字が少しおかしく見えてしまい、思わず笑ってしまった。
すぐに私も準備に入り、食事の配膳準備や衣装などの確認にまわった。
開店30分前となったところで、前半グループとして働く私とハヤトさん、その他クラスメイトたちと共に最後の確認を済ませた後。
裏方の衣装着替え室から何やら歓声が上がり、私が興味本位で覗きに行くと、そこには不思議な光景が広がっていた。
「あの…これ、本当に需要あるんでしょうか…」
「あるある!」
そんなやり取りを交わしながら、ハヤトさんは不安げに身に纏う衣装をちらちらと見ている。
彼が着ていたのは、純白を基調にした王子様のような服装だった。
動く度にマントや裾がひらりと舞い、彼の優雅な所作と相まって本物の王子様のようだった。
「ハヤトさん、その服…」
私が裏方の入口付近からそう話しかけると、ハヤトさんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらカチコチに固まって、ゆっくりとこちらを向いた。
「Aさん、こ、これは…えっと」
誤解です!と必死に誤魔化そうとする彼。私はきょとんとしたまま、彼の姿をしかと目に焼き付けていた。
「…かっこいい、ですね。とてもお似合いです」
「ほら〜!やっぱり加賀美さんが着る意味あったって!」
私が素直にそう褒めると、奥で着付けを担当していた女子生徒が満足気に親指を立てた。
ハヤトさんは私の言葉に嬉しいのか、もう一度自分の格好を確認していた。ふと表の店内スペースから女子生徒の名を呼ぶ声がして、女子生徒は明るく返事をし軽い足取りで向かって行った。
裏方の着替えスペースには…私とハヤトさんの二人きり。
そう考えた途端、変に意識して視線を逸らしてしまった。
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こみ - 私もこの1年間高2A組だったのですごく嬉しかったです!幸せでした! (2021年4月4日 15時) (レス) id: a0adc0f2be (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - ばちぅ兼もてゃさん» こんにちは。コメント、そして読了ありがとうございます!続編の方は別のお話と同時進行の予定ですので、もうしばらくお待ちください。 (2020年6月20日 18時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
ばちぅ兼もてゃ - こんにちは...ばちぅ兼もてゃです...最初から最後まで全部読んでました、執筆お疲れ様でした!続編も楽しみにしてますね、もちろん読みます (2020年6月20日 18時) (レス) id: 603073c1b4 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 蒼渇さん» 蒼渇さん、コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。よければこれからもお付き合い頂ければ励みになります。 (2020年6月2日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼渇(プロフ) - ひぇ…めちゃくちゃキュンって来ました…好きです!!!!!!!無理せず更新頑張って下さい! (2020年6月2日 10時) (レス) id: c685f96854 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊織 | 作成日時:2020年5月30日 14時