【d!】終末世界 (ページ10)

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あぁ、やっぱりあの子も人間じゃないか。
死にたくない。人間誰しも思うこと。青年の顔は憎悪に塗れ、きっと突き飛ばした男を恨んでいるのだろう。

そんなふうに考えながらも、グチャ、グチャ、とヘスリヒの山の下から聞こえてくる生々しい音を聞き流す。周りの者もほとんどが耳を塞ぎ狂気に陥っている。

まぁ、私のように、何を考えているにかわからないような表情でただ突っ立っているような人間もいるが。

暫くするとその音も消え、ヘスリヒが1体、また1体、と青年のいるところから離れていく。なんだなんだ、と青年がいた場所を濃い霧の中、注視していれば、青年の面影をうっすらと残した血塗れの何かが此方へと寄ってきた。

青年だったソレはヘスリヒとは言い難く、肌はまだ人間と同じであるし、体も傷だらけの他は溶けていたりなどはしていない。

青年？「タス...ケテ...イタイ...ヨォ...」

そう観察していればソレはそう言いながら手を伸ばしてこちらへと歩いてくる。もうすぐクリーンエリアへと入る、という所で後ろの方にいたヘスリヒがガッとソレの肩を掴み首にブスッと指を刺し込んだ。

ソレはアガッ、と叫び声を上げるがすぐに力尽き、倒れた。ソレに指を刺したヘスリヒはこちらに向かってニヤ、と笑うとそのままヘスリヒの集団の中へと行ってしまった。

私が今見たヘスリヒがこの短期間で見た数少ないヘスリヒとは何かが違うのに気が付いていた。ヘスリヒは大体が溶けており表情など皆無だった。だが、今のヘスリヒは笑ったことも分かったし、あまり顔が溶けていなかったのだ。

私はもしかしたらヘスリヒにもランクがあるのでは？と考えた。そう私の脳内で思考が完結し、ふと視線を先程倒れたソレに向けるとソレは急に立ち上がり此方へとは来ず、ヘスリヒ達の方へと帰っていったのだ。

帰ったソレは手足や胴体が溶けてはいたが、顔にはあまり変化がない状態だった。しかし肌の色は濃緑に近く、ヘスリヒ化していた。