泥酔 ページ47
女性の部優勝者のパンダさんと歩調を合わせて人々が渦巻く祝宴場に入る。
「此処から先は別行動ね、後で落ち合おう」
パンダさんはわたしの耳元で囁いて何処かへ消えていった。
わたしは顔面国宝、男性の部優勝者を探す。
「中也君ー」
自分にしか聞こえない音量で優勝者の名を呼んでみる。
本当に居ない。
何処か落ち着ける場所に行って周りを見渡そうと、わたしは奥に誂られたバーへと向かう。
あ、あのおじさん
バーのマスターは『グラディウス』のマスターだった。
椅子に座るとつかれがどっと押し寄せてきた。
「づがれだぁ」
「はい」
渋くて低い声に顔を上げるとマスターが酒をわたしの前に置いていた。
「有難う御座います」
そう云って飲もうとした処で思い留まる。
「あ、お金。済みません生憎今持ち合わせが無くて…」
「構いやしないよ。お宅の太宰さんにはお世話になってるからね」
「そうですか」
では遠慮なく、と酒を呑もうとした処で隣の席で殺気が発せられたのに気が付いた。
「……………………中也君だ」
殺気の元は、隣に居たのは
泥酔状態の中也君でした。
──ポチャン
わたしが中也の横顔を眺めていると、中也のグラスの液体が跳ねた。
『中也の暗殺を阻止するのだよ』
太宰の声が脳内でリピートされた。
これは、暗殺か。入れられたのは毒か。
周りに居た人が恐らく容疑者。
辺りを見渡す。
「みんな怪しいぃ」
思わず呟く。
「ぐ…」
わたしは急に首を締められた。
だれ?横を見ると背の高い異黒人風の男だ。
「扶け、て……中也、君……」
届くはずのない蚊の鳴くような声だった。
が、中也は「アァ?」と云って此方を向いた。
目が合う。
中也が立ち上がってグビっと酒を一口呷る。
「やめて…!」
──呑んじゃった。
わたしの処為で中也が死ぬ。
太宰はわたしが願いを云った時、驚いた。
其れは多分、わたしが勝つ前に云った『中也を扶けて』の方で動いていたからだろう。
詰まり──わたしが来なきゃ中也は死ななかった。
涙が零れる。
中也が、わたしの首を締めている男を殴った。
そして、わたしの手を握る。
「大丈夫か。A」
──パチンッ
指が鳴ると音がした。と、同時に見覚えのある部屋へとわたし達は転移した。
「あの、地下室…」
それはグラディウスの地下にあった部屋とよく似ていた。
でも、この部屋はもっと大きい。
隣には中也、そして奥に居るのは
「パンダさん。マスター。如何して」
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爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:爽斗 | 作成日時:2021年7月15日 2時