検索窓
今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:33,320 hit

ファイナルゲーム論 ページ42

「じゃあ、引くね」

太宰はそう前置きして、ゆっくりと引いた。

わたしは自分自身どちらが当たりか判っていない。

引かれた割り箸は太宰の手によって隠されている。

焦れったい。


そして、太宰は割り箸にそっと手を触れた。

──今、色、付けた。

そして手を退かす。

「当たりのようだね」

そう云って笑った。


「違いますよ。だって──」

それはわたしの描いたうさぎじゃないから。

もう一本の割り箸に手をかけて引く。

「え…」

その割り箸には、何も描かれていなかった。



「何を、したんです?」

「何もしてないよ。変な勘ぐりは止めて呉れ給え」

「………」

大丈夫、次、わたしが当たりを引けば──

引けるのか?当たりを。

また、何もかかれて居なかったらどうする?

かと云ってかかれているのに書いてないでしょ。と云ったら恐らく異能力の云う推理ミスに入る。


だったら──その前に消えた謎を暴く!

そう考えている内にも無慈悲に時は過ぎ、

「出来たよ。引き給え」

わたしのターンだ。


「で、では…」

息を吸う。

刺激臭と、アルコールの臭いが鼻を突く。

「っ!アルコール!」

わたしが叫ぶと「あらら」と太宰は笑った。

「アルコールですね!この紙の袋に元々アルコールが塗られていたんです!

アルコールには油性ペンの色を落とす効果があります!紙の袋の中にアルコールを付けて置いて、出した時にアンモニアで色付けする!

二セット目でこの方法を使った時は上手く行かなかったけど、三セット目までに時間があった。わたしが推理する為に部屋を回ったりしたからです!

証拠はこの臭い!そうですね、太宰さん!」

わたしが興奮のあまり捲し立てると、太宰はにこやかに笑って云った。

「肝心な所が読者に説明出来ていない」

と。

「私達はゲームを実際に行っている人だ。その人達はそれぞれに思考を持っている。『自分はやっていない』『だから、相手が犯人だ』ってね。

しかし、読者は違う。読者に目線では『どちらも疑わしい』なのだよ。

其れはどちらにせよ利益があるからだ。

私は言わずもがなだが、Aちゃんは自作自演ならトリックも細工も判る。其れを私の処為にすれば『ルールを破った私の負けだ』。そうだろう?

其れが君の利益だ。

云っただろう?私がやったと云う証拠が無い。と」


何も、言い返せない。

負けなのか?



「だからこうしよう。




君が当たりを引いたら君の云うトリックをやったと認めよう」

ファイナルゲーム本→←ファイナルゲーム序



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
53人がお気に入り
設定タグ:文スト , 中原中也 , 文豪ストレイドッグス   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:爽斗 | 作成日時:2021年7月15日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。