私は今日もトスを上げる【3】

2話 ページ21

『木兎さん……プロがいるだなんて聞いてません！』


陽奈は体育館前で待っていた木兎と、後から来た2人を見て、そう叫ばざるを得なかった


｢えー？だって言ってないもん！｣


木兎は何が楽しいか大笑いする


陽奈の目の前には宮兄弟がいた


『というか、これ、2対2をやるんです？』


｢おう！ビーチバレーって2対2だろ？弟子がやるんだから師匠もやる！｣


どういう理屈だ


｢木兎くん、相手が女子だなんて聞いてへんのやけど｣


宮兄弟も戸惑ったように陽奈を見ていた


｢というか、烏野10番の分身｣


銀髪の方は驚いたように陽奈を見ていた


いや、私からすればあなた達も


｢俺からすればお前らも分身だけどな！女だけど実力はあるぞ！んじゃ、行こう！｣


思ったことをそのまま木兎に言われ、その本人はとっとと体育館の方へ向かっていた


｢いや！質問の答えになってへんやん！｣


金髪の方が木兎に突っ込みながら陽奈を見下ろす


嫌そうな顔だ


『あー……どうも、日向陽奈です。女バレの監督やってます』


陽奈はそう言って頭を下げた


｢宮治です。おにぎり屋開くの目指してます｣


銀髪の方も同じように頭を下げた


｢ほら、お前も挨拶しいや｣


治が侑の方を肘でつつく


｢まぁ、よろしゅう｣


侑は渋々のようにそう言って、木兎の後に続いた


｢おーい！お前ら早くしろー！｣


｢分かっとるわ！｣


中からそんな声が聞こえた


｢侑はいつもあんな感じやから気にせんといてな｣


『あ、はい。大丈夫です』


治の言葉に陽奈はそう言って一緒に体育館の方へ向かった


｢んじゃあ、チーム分けは俺と陽奈な！｣


｢ほーん、自分、セッターなん？｣


侑は圧のある顔で見下ろしてくる


『はい。一応中学までは』


｢いいセットアップするんだぜ！ミャーアツみたいな！｣


｢はぁん？俺のセットアップの方が完璧やわ！｣


侑はやけに威嚇してくるが、陽奈は全く気にしないようにした


気にしたら喧嘩になりそうだし、怖いし


｢んじゃあ、行くぞー！｣


木兎はそう言ってサーブ位置に着いた


あ、待って、私


相手コートに強く木兎の打ったボールが落ちる


その音は、高校時代よりも大きく、重かった


誰のサーブも取れないのでは？？

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