６ ページ6
Aがソファから立ち上がって、
俺に、左の手のひらを差し出す。
Aは左利きやねん。
「持って来たで」
その左手に、
離婚届やなくて、
結婚指輪をのっけたら。
呆れたようにため息つかれた。
「違って。
離婚届だよ。
流石に４日も前に置いておいたんだから、
見てくれたよね？」
４日前？
そんな前に置かれてたのに、
なんで俺、今朝まで気付かれへんかったんや。
もうほんま、自分が嫌んなる。
「見たけど・・・
納得してへんし。
意味分かれへん。
なんで急に、」
「急じゃないよ。
亮は気付いてないだろうけど、
２ケ月前から真剣に考えてたの」
頭、鈍器で殴られた気分やけど。
なんとか態勢を整える。
「２ケ月しか考えずに離婚するて、
それがもうおかしいやろ」
ああ、なんでこない喧嘩腰になってまうねん。
謝って、やり直してって言いたかっただけやのに。
「喧嘩ばっかりして疲れたの。
亮だってそうでしょ？
子供なんて出来たら、
もう大変だよ。
絶対に今より喧嘩が増える。
亮は、仕事仕事の私なんかより、
いつも家にいてくれる女の人、
探した方がいいと思う。
そっちのが似合ってるよ」
「・・・なんやねん、それ。
なんで決めつけるねん」
あかん。
自分でも感情的で、
険しい顔してるって感じてんのに。
けど、自分ではどうしようもない。
もう止まれへん。
「それってさ。
自分が、別に俺より合う相手、
見つけたからなんちゃうん？
自分の思い通りんなってくれる、
優しい丸の方がようなった？
それだけやろ」
嫉妬心で、これ以上ないってぐらいの、
卑屈で嫌な言い方してもうた。
「違う。誤解してる。
さっきは仕事の話してただけだよ。
なんで分かんないの？
丸山先生のことは尊敬してる。
でもそれだけ、」
「尊敬て都合のええ言葉よな。
つまり、男として見てるて、事やろ？」
ぶっ叩かれても仕方ないて、思たのに。
「じゃあ、そう思っとけば、
いいんじゃない？」
Aは、投げやりに言うて、
その目をそらして。
「これはもう私には不要だから」
俺の白衣のポケットに、
プラチナダイヤの指輪を、
すっと入れた。
この指輪は二人で選んだ。
すごいいろんな店、回ってさ。
婚約指輪はいらんて言われて、
やったら、結婚指輪はこだわろ言うて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 394人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひろみ(プロフ) - 素敵なお話ですね…。切ないけど続きが気になるし、私も同じ立場だったら……って考えました。 あけましておめでとうございます。今年もゆっくり進んでいきましょ！ (2020年1月3日 0時) (
レス) id: 45ae244132 (このIDを非表示/違反報告)
美穂(プロフ) - こちらこそいつも楽しみに読ませて頂きありがとうございました。最近コメントしてなかったけどいつも読んでます。来年も更新楽しみにしてます。良いお年をお迎え下さい。 (2019年12月28日 1時) (レス) id: f4c26da760 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - この１年もたくさん素敵な作品読ませて頂きありがとうございました(*^^*) お話の続きも新しいプレイリストも楽しみにしてます、よいお年を♪ (2019年12月27日 22時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
happiness☆(プロフ) - foolさんのお話しの大ファンです。全て好きな作品ですが、最近は、イントロの更新が待ち遠しくて、更新されると一気に読んでしまいます。今後の展開気になりますが、どんな形でも2人が幸せになって欲しいと願っています。個人的には、たあくんを2人で育てて欲しいです。 (2019年12月27日 21時) (レス) id: 8cb89539f0 (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - きっと、このお話も切ない展開なんだと思い、胸がキュッとなります。涙がポロっと出そう。人の幸せってなんなんだろうねぇ……と、考えてしまいます。 (2019年12月23日 21時) (レス) id: 017350f460 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fool x他1人 | 作成日時：2019年9月24日 13時
