幻みたいな君は友達 (ページ5)

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一学期はそんな感じで過ぎた。

そんな感じっていうのは、私は変わらず長尾くんを見かけるたびに沸き立って、小島に「どれだけ長尾くんが可愛くて格好良いか」をぶつけて、
小島はあんまりちゃんと聞いてないような様子で、私の話に付き合ってっていう感じ。

私は長尾くんと特に親しくなることもないまま、時間が過ぎた。

一応、同じ委員会だから、廊下ですれ違ったら挨拶するぐらいの仲にはなったけど、それだけ。

それだけだった長尾くんと私の仲に、二学期
変化が起こった。

二学期の、文化祭5日前。

今日から学校では、本格的に文化祭の設営準備が始まる。

準備のために下校時刻が1時間遅くなる代わりに、実行委員が校舎周辺の見回り(という名の警備)に駆り出されるこの時期。

長尾くんと私の仲に、大きな変化が訪れた。

長尾「よろしくお願いします、A先輩」

二人一組になって見回りをする、くじで決めたらしい私の相手が長尾くんだった。

長尾くんは、二人分の誘導棒を持って小さく会釈する。
少し緊張したような面持ちにつられて、なんだか私も緊張してくる。

長尾「A先輩とちゃんと話すの、初めてですよね…？俺、前から話してみたいって思ってたんですけど、A先輩の横にはいつも小島先輩がおるから」

長尾くんはそう言って恥ずかしそうにはにかんでから、私に誘導棒をひとつ渡した。

(小島、あとで、しばく)なんてことを頭の端で思いながら、苦笑いのまま「そうやったかな」と口走ると、長尾くんは小さい声で「そうですよ」と答えた。