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音が鳴ってから、コンマ数秒の間
身体が千切れそうなくらい強く抱きしめられる。
私を覆うみたいに、
私を守るみたいに、
「……ながお、くん…？」
轟音が鳴り止んだコンマ数秒の後、
私たちの足元には、演劇で使う機材の骨組みがバラバラと落ちていた。
本当に、たくさんの。
その全てが、奇跡みたいに私たちにぶつからずに
落ちたわけがない。
「長尾くん、ねぇ、長尾くん」
だって、今もずっと
私の耳元には長尾くんの呻くような
痛みを我慢するような吐息が漏れ聞こえている。
「……なんで、なんで避けてくれんかったん？」
長尾「だって、俺が避けたらA先輩にぶつかってまう」
「でも、長尾くんが避けへんかったから、長尾くんにぶつかってもうた」
長尾「俺は、俺はいいんです。死んだりせえへんから」
長尾くんは気丈にそう言うけど、声は震えていて
もう落ちてくるものは無いはずなのに、私を抱きしめたまま動かない。
「ふへへ」と力なく笑う彼の声が、嫌に耳につく。
「……死ぬなんて、なんでそんなこと言うん…？」
長尾「………意味なんてないで？ だって、ほんまにそうなんですもん」
「でも、でも私、長尾くんが怪我するのも嫌やよ」
長尾「怪我は治るから、大丈夫です」
「大丈夫、大丈夫」と私の背中をトンと叩いてから、そっと抱きしめられていた腕が解かれた。
鼻先が触れそうなくらい近くにある長尾くんの顔はいつも通り綺麗で、少しも痛くないはずの私の方が泣きたくなる。
長尾「ビックリしましたね、でも大丈夫」
「…………うん、」
長尾「うん、A先輩には俺がおるから、大丈夫です」
そう、はっきりと告げた長尾くんは
天使でも可愛い後輩でもなく、
強くて逞しくて、
私は本当に、彼のことが好きだと思った。
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年9月24日 18時
