幻みたいな君は友達 (ページ33)

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小島に「がんばれ」と肩を叩かれて、立ち上がった私は涙でぐしゃぐしゃになった目元を拭いながら、廊下を駆け出した。

トイレ行って顔洗ってきた方がええかな、
それより、ほんまにこのクラスTシャツのまんまでええんかな、
あぁ絶対目腫れとるし、今日イチブスやで、今の私。

存外冷静な頭ではそう考えてるのに、熱くなった身体は止まらない。

人混みを掻き分けて、大好きな影を探す。

盛況なお化け屋敷の中を「すいません」と謝りながら覗き込んでも、長尾くんの姿はない。
中央階段を駆け降りて中庭に出ても、長尾くんの姿はない。

まだ長尾くんのシフトの時間じゃないから、きっと受付にもいない。

私は、君に伝えなあかんことがあるのに。
誰よりも長尾くんに、私は君が好きだと
伝えあかんのに。

一縷の望みを携えて、私はポケットの中の携帯を手に取った。

LINEのトーク履歴の一番上。
一番に呼びたい名前は、君の名前だけやねんで。
そう、分かってほしい。

そんなふうに念じながら、通話のマークをタップした。

気が遠くなるほどの長い長いコールの後、
喧騒の中から小さな声で「もしもし」と愛おしい声が聞こえてくる。

長尾「………もしもし、」

「長尾くん、今どこにおるん！？」

長尾「えっと…体育館の、」

「体育館な！今すぐ行くからそこ動かんといて！」

長尾「体育館の、裏です…！裏！」

「裏！裏ね！動かんといてよ！」

長尾「………動かんときます」

「よし、じゃあ！」

そう言い放って電話を切ると、周りにいた数名が私のことを怪奇の目で見とった。
そんな声大きなってたかな。
恥ずかしいけど、今はそれどころじゃない。

今すぐ、私の決意が揺らぐ前に
ちゃんと伝えないといかん。

私は、長尾くんが思ってるよりずっと
君のことが好きやってことを。