幻みたいな君は友達 (ページ28)

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去年の文化祭も暑かった。
夕方までずっと暑くて、委員みんなで作ったうちわを校舎中で配って、
「暑いから使ってください」って言って回っとった私たちが誰よりも汗だくで、暑すぎて上裸になろうとした小島をみんなで止めたりして。

その、うちわを受け取った人の中に
もしかしたら長尾くんがいたのかもしれん。

そう思うと、なんだかお腹の底の方から
涙が溢れてきそうになる。

長尾「こんな、楽しそうに笑う人の隣に、俺もいたいって思ったんです」

そう言って、長尾くんは少しだけ歩いた。
少しだけ歩いて、隣の写真の前で立ち止まった。

「………これ、私と……小島？」

その写真には、夕日が逆光になって照明みたいに照らされた、去年の私と小島が写っていた。

写真を撮られてたなんて全然気付かんかったけど、
私は小島を見上げて、小島は私を見下ろして
向かい合って笑ってる。

——そうやった。うちわを配り切って、一番暑がってた私たちの分のうちわがなくなってもうて、
「しゃあないなぁ」って二人で笑ってた。

それが楽しくて楽しくて、
「来年も委員やろうね」って、私が言うて
「当たり前やろ」って、小島が言うてた。

その瞬間を切り取った写真を見て、
長尾くんは少し泣きそうな顔で笑っていた。

長尾「こんな顔して笑うA先輩の隣におるのは俺がいいなって、ほんまにずっと思ってたんです」