幻みたいな君は友達 (ページ18)

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長尾side

A先輩を知ったのは、入学してからすぐのことやったと思う。

委員になる少し前。

教室移動で、2年生の教室が並ぶ廊下を一人で歩いていたとき、向かい側から背の高い男の先輩と、その後ろに隠れるように女の先輩が歩いてきた。

人でごった返す廊下で、一際背の高いその男の先輩は、後ろにいる女の先輩の方を見て呆れたように笑っていて、その女の先輩は「ええって、ええって」なんて言いながら両手で顔を覆っていた。

背の高い男の先輩は、歩くだけでなんとなく目立っていて、顔も綺麗やし華のある人ってああいう人のことを言うんやろなって、俺はそんなことを考えていた。

しかも、そんな人が女子と歩いてるわけで
目立たんでおる方が難しそうや。

今思えば、A先輩の盾になっていたのは小島先輩やったと思う。

そうなると、その時後ろにいた女の先輩は、A先輩だったんやと思う。

たぶん、その時の俺は「あの二人、付き合ってんねやろな〜」なんてことを思っていた。

わちゃわちゃ、その二人は何かを言い合いながら、一人でボーッと歩いていた俺とすれ違って

その瞬間、A先輩が手で口許を覆ったまま内緒話みたいに発した声が聴こえてしまった。

「好きやってバレたらあかんから…！あんまり長尾くんいるとこで目立たんといて！」

小島「目立つ気ぃは無いねんて、ほら、俺イケメンやから」

「だる、長尾くんの方がかっこええし」

小島「あー、はいはい、せやな〜」

二人はそんなことを話して、そのまま廊下の反対側へと歩いていった。

俺は、予想外に聴こえてもうた自分の名前に驚いて、二人の方を振り返ったけど、A先輩は小島先輩の背中を押して、そそくさとどこかへ行ってしまった。