幻みたいな君は友達 (ページ2)

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小島「——おい、おーい！入学式終わったで」

ふと気がつくと、体育館は騒ついていて
さっきまで退屈そうにしていたクラスメイトは、みんな並べられたパイプ椅子から立ち上がって、バラバラと散っていた。

声がした方を見上げると、背の高い男が怪訝そうな表情で私を見下ろしていた。

小島「どした？ぼーっとして」

「あ、うん。別に、なんでもない」

小島「そう？ならええけど」

クラスメイトの小島健。
一年から同じクラスで、今年も同じクラスの彼とは、委員会で話すようになってからなんとなくこうしてつるむ仲になった。

小島の言葉に曖昧に頷いてから、半ば無意識にさっきの彼が座っていた方向に目を遣ると、そこにはもう誰も座っていなかった。

長尾くん、長尾謙杜くん。

あの綺麗な鼻筋を、綺麗な髪を
もっと近くで見てみたら、もっと綺麗なのかな。

そんなの、ちょっとズルいような気さえしてくる。

小島「おーい、A。教室戻るって」

そんな小島の声で我に返る。
「お前、今日おかしいで」なんて、微妙に失礼なことを言う小島をグーで小突いて、私も立ち上がった。

小島「これから委員会決めやねんから、気合い入れろって」

「なんで気合い入れなあかんの」

小島「なぁんでって、ほんまに言うてる？」

「委員会決めに気合い入れたことなんてないし」

のろのろと小島と並んで、ブレザーの人混みを進んでいく。

こういうとき、背の高い小島が近くにいると歩きやすくて助かる。
このデカい男を盾にして、スムーズに歩くことができるから。