初心な僕らは恋を知らない (ページ33)

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「スッキリは…してないよ、するわけないじゃん」

小島「忘れられへん、みたいなやつ？」

「まぁ、そうかも」

だって、長尾くんのことは本気で好きだったし。
好きじゃなかったら、長尾くんに申し訳なく思って別れたりなんかしない。

心の中で薄れ始めていた罪悪感が、変なふうに蘇る。

小島「Aは、忘れたいって思ってんの？」

健ちゃんの発した言葉は泣きたくなるぐらい残酷なのに、表情が優しいから混乱する。

本当はずっと思ってた。
道枝くんに言われる前から、ずっと。

忘れられたら、どんなに楽だろうって。

「………忘れたいけど、簡単に忘れられるものでもない、でしょ」

忘れられるぐらい好きな人が出来たらいいけど、そんな人が現れる想像もできないし。

だったら、このどうにもならない気持ちを持ったまま、日陰で長尾くんを見てるだけでいいって思ってた。

思ってたのに、
向かいに座る男は、私のこのどうにもならない気持ちをどうにかできそうなぐらい、私の心に割り込んでくる。

こんなタイミングで、正面にある健ちゃんの顔を見つめて(綺麗な顔だなぁ)なんて思ってしまう自分が悔しい。

変わらず笑顔のまま頬杖をついた健ちゃんは、少し上目遣いで薄く口を開く。

小島「じゃあ、俺が忘れさせてもいい？」