初心な僕らは恋を知らない (ページ29)

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長尾side

その言葉に思わず顔を上げると、こじけんは変わらずニッコリ笑っていた。
色々察した、みたいな表情。

小島「Aもおんなじ反応しとったわ、今の」

こじけんは「LINE来てんの見て、その顔してた」と、居心地悪そうに苦笑いする。

俺の頭の中はもう、新しい情報でいっぱいいっぱいになっとって、情けない声で「どういう意味？」と訊ねることしかできなかった。

小島「二人で飯食うてるときに、Aの携帯にLINE来たから来てんで〜って言うたら、A『ながっ…！』とか言うてたから。まぁ、Aはバレてへんと思ってるやろうけど」

長尾「二人で飯食うとる」

小島「食うやろ！友達やねんから！」

長尾「LINEも見とるし」

小島「見えちゃったの！なんやねん！セコムか！」

たぶんちょっと面倒臭くなり始めてるこじけん。
エレベーターホールにかけられた時計の針は、もうそろそろ集合時間に届きそうだった。

長尾「…………こじけんやったら、別にええんかな」

小島「ん？」

長尾「Aさんの相手、こじけんぐらいええヤツやったら悪くないなって」

小島「いやいやいや、急やな」

長尾「だって！！俺、Aさんに振られとるし！」

半分ヤケになって俺がそう言うと、こじけんは少し困ったように笑った。

それから、俺の肩にポンと手を置く。
その手は俺の手より大きくて、ずっと男らしい。

小島「ながちゃんがそれでええなら、俺
ほんまに取ってまうで？」