初心な僕らは恋を知らない (ページ20)

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もう、2ヵ月も経つのに、まだ思い出す。

思い出して、やっぱり嘘は良くなかったなって反省する。
でも、じゃあ何て言えば良かったかっていうと、それも分からない。

長尾くんのことが好きで、むしろ付き合う前より今の方がずっと好きだけど、でも別れたいなんて、どんなに言葉を尽くしても、私の真意は伝えられない気がした。

“——だから、Aさんに…今度は好きになってもらえるように、俺……頑張ってもいい？”

頑張ってくれなくても、長尾くんのことはずっと好きなんだよ、私。
ただでさえ、頑張ってるところを見れば見るほど好きになってたのに、

というか、頑張ってるところを見れば見るほど好きになるのと同時に、申し訳なさも大きくなっていった。

最初は、言い慣れない「好き」を伝えるのが恥ずかしいだけだった。
恥ずかしくて、でもその恥ずかしさもまとめて「好き」だって言ってくれる長尾くんが格好良くて、私も好きだと思った。

でも、一緒にいる時間が長くなるにつれて、
色んなことが申し訳なくなってくる。

だって、たぶん私は
仕事終わりにレンタカーを借りて長尾くんを迎えにいくなんて、たぶんしない。

明日会うし、疲れてるから明日でいいかって
なってしまう。

長尾くんが私を思って頑張ってくれればくれるほど、私は自分の気持ちが足りないことに苦しくなった。

たぶん、この気持ちを全部正直に伝えたら、長尾くんは「俺がしたくてしてんねやから、気にせんといて」って言うんだろう。

それじゃあ何も変わらない。

このままいたら、いつか長尾くんの方から、私に愛想を尽かしてしまう。

だから、嘘をついた。
本当に言いたかったのは「頑張れなくてごめん」
「あなたのために頑張れる人と幸せになって」

たぶん、そう言いたかった。

——と、日々をセンチメンタルに過ごしていたいのに、突如現れたあの男は、私のセンチメンタルをぶち壊しにくる。