初心な僕らは恋を知らない (ページ14)

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小島「——さっき、なんかLINE来てたで」

ハンカチで手を拭きながら席につくと、
健ちゃんがすげない口調でそう言った。

トントン、と右手の人差し指でテーブルを軽く叩く。
口調とは裏腹に、含みのある表情が鼻について「なに？」と訊ねると「なぁんも」と返ってきた。

健ちゃん曰く、感動の再会をした二人はその日のうちに飲みにいくのが決まりらしく
(そんな決まりがあってたまるか)と思ったけど、生憎独り身の私に予定はなく、何と言って断ろうか逡巡している内に、健ちゃんは勝手に店を予約してた。

そういう、ちゃっかりしてるところは昔から変わらない。

そうして、健ちゃんが来慣れている(らしい)居酒屋に、私は連れて来られた。

居酒屋に来慣れている健ちゃんなんて想像付かないけど、お店の人と話す様子はなんだか親しいみたいだったし、もうあんまり深いことは考えないことにした。

席についてから小一時間が経ち、いくらかお酒も飲み、トイレから戻ってきたところで冒頭の健ちゃんの言葉に戻るというわけ。

小島「さっき、なんかLINE来てたで」

テーブルの上に置きっぱなしだった携帯を指差した健ちゃんは、やっぱりすげない口調のまま、含みのある笑みを浮かべていた。

「……なに？」

小島「んー、なぁんも？」

意図の読めない表情にモヤつきながら、私はLINEのアプリを立ち上げたあと、
一番上の名前を脳直でタップした瞬間、

「——なが、っ」

思わず声が漏れた。
慌てて口を塞いだけど、正面に座る健ちゃんは変わらず含みのある表情で微笑んでいる。