$19 ページ20
side:you
_ﾄﾞｻｯ
冷え切った脳味噌がまともな思考回路を手放し、道の真ん中だろうとお構いなくしゃがみ込んだ体を包む、安物コートの衣擦れ。
視線を少し前にずらすと、よく磨かれた傷ひとつない黒革靴がこちらを睨んでいた。
北斗「とりあえず立て、」
人通りの多い駅前でしゃがみ込んだ女と170を優に越す男が居たら嫌でも目立つ。
二の腕を掴まれ強引に引き上げられる。
布越しに微かに伝わる手の暖かさは目の前の景色を簡単に滲ませた。
A「、、なんで…」
北斗「ジェシーが'カウンターに戻ったら居なくなってた'って大騒ぎしてたぞ」
A「…」
北斗「戻らないのか、」
なんで、彼がこんなところに私の荷物を持って来たのか。
なんで、私が困っている時に限って現れるのか。
続けたい質問が今にも溢れそうな涙に堰き止められて口を吐いてこない。
すると痺れを切らしたように、とりあえず乗って、と路肩に停められた黒塗りの車に連れられる。
もはや抵抗する気力などなかった。
そもそも、樹にとって私は付き纏い女だが、彼からしたら素性知れずの怪しい女だ。
このあとどう扱われても文句は言えない。
しばらく流れる街灯を眺めていると、郊外の大きな建物の駐車場に停まった。
…どこかの病院のようだ。
始末ついでに臓器でも売られるのか、と思案するのは安直すぎだろうか。
車の主は誰かに短い電話をすると、運転席から降りる。
北斗「歩ける？」
A「…はい。大丈夫です」
そして後部座席の扉を開けられ、いつの日かのように手を差し伸べられた。
私はその手を肯定の意と引き換えに断る。
生意気にも、まだ自尊心が邪魔をして素直に厚意を受け取ることは出来なかった。
不安感と、彼の態度への疑問感を抱えたまま、
'じゃあ気をつけて、'と手を引っ込めた彼を追うように、再び凍てつく車外に身を乗り出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 507人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
七星のあ - あおさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます☺︎ご期待に添えるように頑張ります。 (2022年11月29日 23時) (
レス) id: 0371497e5e (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - モチーフになった曲も大好きなので、こういう作品読みたいと思ってました！！見つけられて良かったです☺️☺️楽しみにしてます。 (2022年11月28日 0時) (レス) id: 0c466d2450 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七星のあ | 作成日時：2020年7月10日 8時
