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side:you
頭の中を心音が鳴り響く。
水槽から出された魚みたいに肺が上手く酸素を取り込まない。
そんな私を嘲笑うように、向かいの大通りは渋滞の真っ赤な明かりが無情にも列を成している。
軟禁紛いに趣味の悪い部屋に閉じ込められ、なぜか所有者と別の男に逃して貰ったところまではよかった。
お礼もそこそこに、何故かジェシーに'ご馳走するから'と半ば強制的にカウンターまで腕を引かれ2.3言話をしながら酒を注がれるのを待っていると、本日二度目の着信音が彼のポケットを震わせた。
…京本大我もジェシーも、立場上私のような一般人に聞かれては困る内容の電話なのだろう。
着信音と共に置き去りにされるのも二度目だ。
自分を出禁にした男の誘いなど怪しくて仕方ないが、ジェシーにシリアルの事も確認せねばと大人しくバーテンダーがシェイカーを振るのを見ていると不意に後ろから声を掛けられた。
樹「こんばんは、」
声の主は、田中樹。
これまでの一方的なものではなく、紛うことなく混じり合った視線。
名前を聞かれた時、咄嗟に誤魔化すことが出来なかった。
動揺していたから？
それとも、
…目の前の樹に言って欲しかった。
なんて？
久しぶり？
会いたかった？
せめて、私だと分かって欲しかったと思うのはあまりに傲慢だったのか。
名前を聞いて少しでも樹の顔色が変われば、まだ踏み込む価値はあったのかもしれない。
しかし無慈悲にも彼は私を拒絶した。
当たり前だ。樹にとって今の私は、見知らぬ付き纏い女にしか見えていないのだろう。
あまりの己の高慢ちきさに笑えてくる。
そこからはあまり記憶がない。
どうやらジェシーはおろか、クラークに預けた鞄もコートも置いて飛び出して来たのだろう。
現状、地下鉄に続く下り階段の目の前で絶望感に苛まれている。
電車に乗るためのICカードも財布も家の鍵も、全てあの場に置いて来てしまった、というなんとも言えぬ絶望感。
寒さのせいで頭痛がする。
段々とつま先の感覚がなくなって来たのを感じる。
先程まで何も感じていなかった12�僂梁�枷が重くて仕方ない。
青看板に目をやる。
約20km、この足で3時間少し。
歩けない距離じゃない。
凍てつく爪先か、間違いなく体力を奪うヒールか。
天秤に掛け、1秒と掛からずストラップに爪を引っ掛けた。
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七星のあ - あおさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます☺︎ご期待に添えるように頑張ります。 (2022年11月29日 23時) (
レス) id: 0371497e5e (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - モチーフになった曲も大好きなので、こういう作品読みたいと思ってました！！見つけられて良かったです☺️☺️楽しみにしてます。 (2022年11月28日 0時) (レス) id: 0c466d2450 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：七星のあ | 作成日時：2020年7月10日 8時
