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休み時間、廊下で山田を見かけた。

滅多に話しているところを見たことがない女子と歩く姿を、



そして、誰もいない教室に入るところを。



理由を知りたくて、そのドアに耳を近づけると、聞こえてくる会話。




『あの、その、

……… 山田くんが、すきです。』


『………… ありがとう、でも ……………






返事は、また今度でもいいかな?』




は?

その瞬間芽生えた怒り



早く断れよ、そんな告白。

俺がいるのに、返事を持ち越す意味。



訳が分からなくて、無性に腹が立った。



その後、どう戻ったかなんて覚えてない。
とにかくムカついて、やり場のない怒りを机にぶつけた。

周りからの視線なんて知らない。

そんな事、いちいち気にしてられるか。




「……… 伊野ちゃん?」




机に突っ伏していると、頭上から聞こえた声。


誰なのかなんて、そんなの毎日喋ってる相手だから分かってる。
それでも、頭を上げようなんて思わなかった。



今の俺はみっともない。
小さなことに嫉妬し、怒り狂ったヤツのことなんてほっといてくれ。

そうは思ったけど、口には出さなかった。




………… コイツは、いいヤツだから。




「別に、」

「そっか………… じゃあ、面白い話してあげる!」




さっきね〜、なんて俺の話は深掘りしてこなかった。
彼なりの優しさを改めて、身に染みて味わった。




「伊野ちゃん、ぶさいく。」

「大ちゃんだけには言われたくないよ。」




やっと顔を上げた俺に向かって笑ってそう呟いた大ちゃん。

頬を伝う涙をポロシャツの裾で拭いてくれて、
皆にバレないようにと手を取って中庭の方に移動した。




「で、何があったの。」

「………… やまだがいたの、女子とふたりで。」

「やまだって、伊野ちゃんの恋人だっけ、?」

「そ… 、告白されてた。」




そこから起きたことを全て隠さず大ちゃんに話した。時々相槌を打ってくれるから、彼と話をするのは全然嫌じゃなくて寧ろ好きだ。




「…それは、やだね。」

「だろ?」

「でも、話さないと本当の理由なんてわかんないよ。

今日でもいいから、話しかけた方がいいと思う。んで、ちゃんと聞いてこい。」




よしよしと俺の頭を撫でてくれた大ちゃんが少し大人っぽく見えて、くだらないことに嫉妬している今の俺は子供みたい。


いつもと逆だね。

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なすも(プロフ) - shootingstarhapさん» ほんとですか!嬉しいです!これからもどうぞよろしくお願いします^^ (2019年6月15日 21時) (レス) id: 457ac5cab4 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - やまいのさんもいのやまさんもどちらのお話しも好きです(^^)キュンとしました(^-^) (2019年6月15日 0時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なすも | 作成日時:2019年6月9日 14時

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