昔、隣の席だった君。【skt】

となり*3 ページ3

窓の外は、今日のために咲いたのではないかと思うほどの満開の桜の木。
綺麗に装飾が施されている校内。
色とりどりに飾られた黒板。
どこか緊張した面持ちで席に座る私達。


………今日で最後なんだ。

黒板の『卒業おめでとう！』という字を見て、急に実感が沸いてくる。
今までいろんな行事を共に行ってきた皆とも今日でお別れだ。

高校では皆それぞれ別の道に行く。
もしかしたら、同じ高校の人がこの中からいるかもしれない。
なんて思うことも私にはできない。

『引越し、かぁ。』

お父さんの仕事の関係で兵庫から北海道に引っ越すことになる。
だから、この辺にまだ住む皆とは違って偶然会えるということが無いのだ。

そう思うとじわりと涙が浮かびそうになって、必死に抑える。
ダメだ、まだ式も始まってないのに。


『もう瀬川さん泣きそうになってるやん。
これから号泣するんちゃう？』

ふと隣の席の彼に笑いながら話しかけられる。


『泣いてないよ。
号泣なんて恥ずかしくて出来ないよ。』

私の言葉に、ふぅん とつまらなさそうに返した彼。


そっちから聞いたくせに と言い返そうかと思ったけれど、彼はもう友達とお喋りしていた。
それもそうだ彼は明るくて、誰に対しても優しいから人気者。

私と彼の接点は中学最後の隣の席、というだけ。


あと、私が勝手に一方的に想いを寄せているというだけ。



担任の先生も入ってきて、一気に静まりかえる教室内。


体育館に移動して式をやっている間は泣かなかった。
涙目だったが、頑張って我慢していた。

しかし教室に戻り、先生のお話を聞いていると今までの皆との思い出が走馬灯のように
駆け巡り、涙が零れてしまった。

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