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となり*19 ページ19

目の前の彼は、一旦会場の外に出て私の手首を離す。


そして、私の目を見 口を開いた。

「先月ぶりやね、瀬川さん。」


そう言って少し微笑んだ目の前の彼。

「そう、ですね。」

戸惑いながら言うと、目の前の彼は少し笑う。


「何で、敬語なん?
元同級生やし、なんか堅苦しくて嫌なんやけど。」

あ、それで笑っていたのか。と、少し納得する。
けれど、ちゃんと聞かなければ。

「歌い手の、となりの坂田さん ですよね?」

目の前の彼は、困ったように頷いた。
分かっていたことだけれど、やはりまだ 動揺を隠せない。

「ん、そう。となりの坂田って名前で活動させてもらってる。」

やっぱり、リスナーさんにバレるというのは困るのか。
だから、眉が八の字になっているのか。

そう思って、申し訳ない気持ちになる。

その時、彼が小さくため息をついて余計にシュンとなる。


「やっぱ、敬語なんやね…」

え、そこ?
思ってもいない所に悩んでいたようで、思わず目を見開く。


でも、やっぱり敬語を抜けるということはとても出来そうにない。
だって、元同級生でも私がずっと大好きだった 手の届かない相手だ。
気安くタメ口を交わせるなんて、もってのほか。

けれど、彼は少し悲しそうにしていて。
まるでそれは飼い主に怒られた後の犬のようで とても可愛くて、無理だなんて言えなかった。


「じゃ、じゃあ、少しずつ直していきます。」

その言葉に彼はフッと笑う。


「少しずつって、どれだけ俺と会うつもりなん?」

思いもよらない言葉に、思わず顔が熱くなる。
え、どうしてそう思われてしまうのだろうか。

もしかして、印象が悪くなってしまったかな……
そう思うと、顔がサァッと青くなるのが分かる。

とにかく、否定しなければ。


「そんなつもりで言ったわけじゃ……」

一生懸命に伝えると、彼は噴出して笑った。


「いや、冗談冗談。
瀬川さんって、こんなにおもろかったっけ。
顔が赤くなったり青くなったりして見てて すごく楽しかったわ。」

まだ面白いのか、笑い続ける彼。
笑い声が、イヤホン越しに聞いていた声と一緒で 本物なんだ…と当たり前のことを考えてしまう。

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菊香(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!早速お邪魔しますね(^^) (2018年2月1日 20時) (レス) id: aea442a5e9 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 菊香さん» 大丈夫ですよ!お待ちしております! (2018年2月1日 7時) (レス) id: 26a9623291 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - サラさん» まじですか!!ボード行っても大丈夫でしょうか? (2018年1月31日 11時) (レス) id: aea442a5e9 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - うしさせの春ツ北海道参戦します! (2018年1月31日 5時) (レス) id: 26a9623291 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - ちーちゃんさん» ぴゃああああ(( (2018年1月30日 23時) (レス) id: aea442a5e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:菊香 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年11月16日 23時

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