昔、隣の席だった君。【skt】 (ページ17)

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となり*17 ページ17

「もう、忘れたものは仕方ないよ。
ほーら、暗い顔をやめなさい!」

なぎさが呆れたように言う。
それもそのはず。

数分前に再会を果たした私達。
お互いに、久しぶりで盛り上がっていた。
けれど、なぎさが彼の話題を持ちかけた瞬間置いてけぼりとなったハンカチを思い出したのだ。

それからずっと、私はため息ばかりついていた。

でも、なぎさの言うとおりだ。
折角懐かしい顔ぶれが見れる。こんな浮かない顔はやめよう。
そう決めて、なぎさと一緒に会場へ向かった。

「A?久しぶりやね～!!」

会場にはもう集まっている人が何人かいて、テンションが上がってくる。
久々に聞く、今は離れてしまった関西弁が懐かしい。

今日、来れない人は何人かいるみたいだけどほとんど来れるらしい。
まだまだ人が集まるだろう。

続々と集まる人を見て、思わず口元が緩む。

「ちょっと、向こうの方行こうよ。」

なぎさがそう声をかけてくる。
私は頷いて、なぎさに付いて行った。

そこには、中学の頃仲の良かったメンバーが集まっていて、よりテンションが上がる。
皆と交わす会話はとても楽しくて、何年も会っていないとは思えない。
心はもう、中学の頃に戻っている。

パッと見るだけじゃ誰だか分からない人もいたけれど、
ほとんど、誰だか分かる。

皆、中学の頃より成長していてちゃんとした大人になっていた。
もう、会えないと思っていた友人達と会えてもう涙腺が緩んでくる。

あまりにも泣くには早すぎる抑えろ。自分。

会話を重ねていると、男性数人が入ってきたのを横目で見た。
あの中に、彼がいるかもなぁ。なんて。

友人に言葉を返しながらも、少し見てみる。
そして、その中にある1人の顔を見つけて言葉が止まった。

「………………え、」

あの人を、私はよく知っている。
あの顔の写真は私のスマホにたくさん入っている。
少し聞こえてくるあの人の声を、私はたくさん聞いてきた。

いやいやいやいや、さすがに違うでしょ。
心でそう思いながらも見れば見るほど、あの人がある人物と同じに見えてしまう。

少し、赤みがかった髪。
パッチリとした瞳。
ちょっと低い声。
そして、楽しそうな癖のある笑い声も。

全部、全部。

先月に見た。
いや、握手をした私の大好きな人にしか見えない。