青春エンドロール hk→in→yb ページ30
高校生パロ。矢印順に一方通行。
・
*
ひとつの恋が、終わろうとしていた。
『悪い…俺、伊野尾のこと、そういうふうには…』
わかってた、わかってたよ。だけどね、最後の悪あがきだったの。
『…そ、か。ごめんね薮ぅ、こんなこと言って』
あなたの前では、最後まで綺麗なままでいたくて、泣きたくはなくて。
『…卒業おめでと、やぶ』
『…おぅ。伊野尾も、頑張れよ』
俺は笑ったまま、大好きだった人に別れを告げた。
ぼやけた視界に、ちいさくなってくあの人と舞い散る桜。なんて綺麗なエンドロールだろう。
「っく、…ぅっ…」
おかしいなぁ、こんなに泣けるなんて。
俺、高校2年生の男の子なのに。
「…いのちゃん」
「…ひかる…」
「やっぱりここに居た」
何かある度にひかると集まった非常階段。
ひかるはいつもと変わらず俺の隣に腰を下ろした。
「…薮に、言ったの?」
「…うん。あのね、やっぱダメだった」
「そっ…か…」
ひかるにはね、全部相談してたんだ。
男が好き、しかも相手が薮だなんて、受け入れられる人は多くないはずなのに、ひかるは俺を応援してくれた。
いつでも隣にいて、話を聞いてくれて、励ましてくれて。とっても優しくて、面倒見が良くて…
「…ひかるみたいな人、好きになれば良かった。ひかるが恋人だったらなぁ…」
なんてね。言ったそばから違和感で、あぁ、やっぱり俺は薮が好きなんだって嫌でも自覚する。
優しくなくたって、デリカシーがなくたって、たとえ好きと言ってくれなくたって。
こんなに未練しかないのに、『ひかるが恋人なら』なんて、今まで応援してくれたひかるに失礼だ。
「…ごめん、失礼だよねこんなの。ごめんっ…」
「…付き合ってみる?」
「え?」
「俺と、付き合ってみる?」
隣のひかるは、なんだか泣きそうで。
そっか、ひかるは本当に優しいから。
傷心の俺に心を痛めて、気を遣ってくれてるんだ。
無理にこんなこと言わせて、俺ってば本当に最低じゃん。
「あの、ひかるっ俺そんなつもりじゃ、」
「……っふ、変な顔。うそに決まってんじゃん」
「なっ…ひかるひどい!」
「いのちゃんが泣いてるから…笑わせたかったの」
そっぽを向きながらの言葉。
そうだよ、ひかるはそういう奴だ。
「…ありがとね、ひかる。」
・
・
「本気、だったんだけどな」
卒業式という門出の日。
涙で滲む、ふたつの青春エンドロール。
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作者名:みつあめ | 作成日時:2020年11月29日 0時