倉とやすの物語�� ページ23
おーくらside
目が覚めたらやすはまだ俺の胸の中で、すや
すや寝息をたてていた。
やすってこんなに華奢だったのか。
あいつにとってこの二年は激動の年だった。
何で神様は彼に大変な試練を与えたんやろ
か？
こんなにも優しくて、思いやりがあって、
人の気持ちに寄り添える人なのに。
彼の顔に触れてみる。
これからも絶対、俺が絶対守っていく。
あかん、涙がこぼれそうや。
俺は急いで顔をふとんにうずめた。
「そんなに泣いたら、布団が海になってまう
で。(笑)」
え？見られた？
「や、やす、おはよう。
大丈夫？」
「うん、ちょっと体痛いや。(笑)」
「俺もだよ。(笑)」
泣いてたこと、聞かないのはやすの優しさ
からだろうか？
「今日は休みだから、しばらくはこのままで
いていい？」
「そだな、このままでええか。(笑)
なぁ、何か飲み物持ってこようか。」
「目覚めの一杯？」
「水分はちゃんと補給しないとな。」
「うん。」
俺はそばにあったバスタオルを腰に巻き、台
所に向かった。
昨日オレンジジュース飲んでしまったから、
コーヒーでもいれようかな？
「やす〜？」
「ん？どないしたん？」
「コーヒーいれようと思うんやけど、大丈夫
かなぁ。」
「うん、大丈夫。
ありがとう。」
やかんを火にかけて、コーヒー豆を挽く。
「いい匂いだね。」
「そやろ、とっておきのコーヒーやから。」
「そんなん飲んでしまって、ええのかな？」
「とっておきの人ととっておきのコーヒー
を飲むんだよ。」
ちょっとキザな事、言うてしまったかな。
なんて考えていたら、急に背中が温かくなっ
た。
「やす、どないしたん？」
「うふ、俺、とっておき。」
て言って背中に抱きついてきた。
「こっち向いて？」
「こう？」
こんなシチュエーションで俺が耐えられる
わけ、無いやろ。
「もうすぐおーくらの誕生日やね。」
「あ、そうやった。
俺、何歳になるんやろか。」
「俺たち、3ヶ月だけタメになるんだよ。」
「そっかぁ。
やすと一緒だな。」
「うん。」
「何か欲しいものある？」
「欲しいものはこの手の中におるよ。」
俺の願いは・・・。
〜fin〜
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作者名：niko | 作成日時：2021年3月15日 19時
