51話友だち ページ9
「……えぇ…」
本日二度目の呆れたため息をついた。
まさかあの彼が、玄関前にある花壇の前にしゃがんでじっと花を見ているだなんて誰が想像できたのか。
半ば諦めた心地でここに向かったが、まさかここにいるだなんて…。
野坂ってそんなに花が好きだったっけ?
今までそんな話を聞いたこともないので、首を傾げる。
「…Aちゃん」
「_っ!?」
いきなり野坂が前触れもなく私の名前を言うので、彼に聞こえぐらいの足音を立ててしまった。
音に反応した野坂は首を動かしこちらに焦点をあてると、儚げに笑った。
「あれ…来てくれたんだ」
「明日、行方不明になってるかもしれない男の子の第一発見者になりたくないもの」
嫌味を口にしながら、足を動かして彼に向かって歩く。
「へえー、僕の心配してくれてたの?嬉しいな」
「いや全然。」
「ふふっ、そうなんだ」
「ええ、そうよ」
歩くのを止めて目の前にいる男の子に向きあう。
「…アレ、もう持ってないよね?」
その笑顔を崩すことなく野坂は当たり障りもなく尋ねた。
つられて私も微笑む。
アレというのは、フロイから貰った髪飾りだろう。
もちろん持ってないわけがないので、彼の笑顔を壊すことになった。
「拾ったよ。ちなみに捨てる予定もない。
あとね、さっきみたいに勝手に捨てたら許さないから」
予想通りガラガラと彼の笑顔が崩れていって、その顔には動揺しかない。
まあ、今の今まで彼のお願いに殆ど応えてきたのだから驚くのも無理ないだろうけど。
「…え。なん_」
「だって"友達"から貰った物を大事にするのは当たり前のことじゃん」
「…ともだち?」
「そう、友達。
会いに行けないぐらい遠い場所にいるけど、私の友達なの。友達から貰ったものは大切にしなさいって、そう教わった。
だから捨てないの、わかった?」
正直なところ私は"友達"という枠組みが好きじゃない。
でも、ここは友達全肯定の人間になった方が色々と方がつく。
徹底して友達大好き人間になったつもりで言ったつもりだったが、彼は立ち上がってどんよりとした眼差しを向ける。
「…そんな他人行儀になるぐらい、僕よりその友だちがいいってこと?」
「他人行儀になったつもりはないけど、」
どうやら態度が気に食わなかったらしい。後悔の念が募る。
普通を振る舞ってみたけれど、普通の加減がわからない。
…だいたい友達なんて信じてない自分が、"好き"のアピールなんて無理な話だったのだろう。
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沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます!(*´∇`*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします!\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです!続きを待ってます!(*´ω`*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます!!凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます!更新のろのろですみません…! (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね!これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう?これからも楽しみにしてます! (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え!?本当ですか!!ありがとうございます!!コメント本当にありがとうございます!嬉しいです! (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙稀乃 | 作成日時:2020年4月12日 12時