７６話照らす少女 ページ36
「あ、あの…」
それはとあるなんでもない日の午後のことだった。
いつものように図書室に向かう足を珍しく誰かが引き止める。
ここでもし_呼び止めた相手が職員だとするのなら、しゃんと背筋を伸ばし表情筋を持ち上げて、なるべく相手が嫌がらない程度に相槌を打たなければならないが、今回はそうではなかった。
振り返ると、そこにいたのは黒髪おさげの、私とほぼ同い年の女の子。
「もしかして、あなたが…"あのAちゃん"…？」
「え？」
唐突に不思議なことを聞いてきた。
しかし、彼女の言う『あのAちゃん』の、"あの"が一体なんのことを指すのかさっぱりだったから困る。
ここの施設はそもそも名前呼びより番号呼びだ。その子が問題を起こしたり、自分から何かしない限り、人伝でその子の名前を知ることができないだろう。
でもまあ、どっかの誰かさんが私の名前を鬱陶しいほど連呼するし、研究員に目はつけられるし、そもそもAという子は今の所私しかいないから、たぶん"あのAちゃん"は私だろう。
あまり目立ちたくない私からすれば、こんな不本意な話はないのだが。
私の顔を見てどう思ったのか、おさげの少女は手を振って首を大げさに振った。
「ち、ちがってたらごめん…！」
「あ、その…違うも何も、私の名前は確かにAだけど、…何か用なの？」
敵意がないことを示すため、笑顔で彼女に話しかけ考えていた。
この後予想しうる事は2つ。
1つは私個人に用があること。珍しく隣に野坂悠馬がいないこの隙をついたのだから、少なくとも用心に超したことはない。
2つは…野坂へのコンタクト。
なんといっても、野坂の容姿は整っている。
…小学生の頃から美形なのがわかるってことは、これからは相当凄いことなるのは予想がつくのは簡単で、将来女性の方々をとっかえひっかえしそうな勢いだ。
その美少年野坂に群がる人も多いもので…児童の入れ替えがあるこの施設だから、ここに入ってきたばかりの女の子を中心にこの件は最近よく起き始めた。
野坂がいなくなる度、呼ばれては関係を聞かれたり、彼女達と野坂の間を取り持つように頼まれるの繰り返しで、その度に私の元へ戻ってきた野坂が追い払っていた。
その時ばかりは野坂お得意の人払いはかなり役に立ったが、根本的に言えば彼が私から離れてくれればいい話なのだ。
勘違いしてはいけない！
目の前でそんな事を考えてると思ってもいないだろう彼女は笑みを浮かべ本題を口にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます！(*´∇｀*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします！\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (
レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます！！凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます！更新のろのろですみません…！ (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね！これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう？これからも楽しみにしてます！ (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え！？本当ですか！！ありがとうございます！！コメント本当にありがとうございます！嬉しいです！ (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：沙稀乃 | 作成日時：2020年4月12日 12時
