美しい友情 ページ23
倉間の銃口が神童へと向けられている。
神童は微動だにせず、ジッと倉間を見据えた。その瞳からは戸惑いと悲しみ……そして怒りが滲んでいた。倉間の指の動きひとつで命を落としかねない状況下にいても、不思議とさっきまでの恐怖は湧いてこない。
目の前で霧野と狩屋が殺された。死を目の当たりにして、感覚が麻痺しているのかもしれない。
「……本気、なんだな」
「今更何を迷う必要がある? お前も浜野も、逃げ出した信助もみんなまとめて殺してやるよ」
なあ、倉間。俺はお前のこと何も理解できない。仲間を殺しておきながら、一乃を守るのだと主張するお前のことが。
けどこれだけは言える。お前は俺の前で、そしておそらくは俺たちの見ていない所でも仲間を殺してきた殺人鬼。……絶対に許しはしない!
「___死ね、神童」
「神童!」
倉間は神童に狙いを定め撃鉄を起こす。ところがその時、浜野が神童を庇うように前へ進み出た。
それはまさしく友情を絵に描いたような光景。何人も手にかけてきた倉間にとっては反吐が出そうな光景。相手が誰だろうともはや関係無い。浜野はかつての親友だが、だからと言って殺すのを躊躇する理由にはならない。そう決めていたのだから。
しかし途中から乱入してきた倉間は知らなかった。浜野に支給された“武器”を。
「浜野……じゃあお前が死ねよ」
そう吐き捨て、引き金を引く。
弾丸は真っ直ぐ浜野の胸を貫き___はせず、防弾チョッキに阻まれて止まった。そうとも知らない倉間は、撃たれて倒れたフリをする浜野を疑いもせず神童の方を向いた。
「美しい友情だな。全部無意味だけどさ」
「……倉間」
神童は観念したように目を閉じて、その場に座り込む。そして静かに口を開いた。
「俺の武器は電卓。俺がお前に殺されるのは明白みたいだ」
「わかったら抵抗すんなよ。弾の無駄だし」
「ああ。だが死ぬ前に、お前と少し話がしたい。それすらもダメか?」
縋るような目で見つめられ、倉間は表情を険しくする。信助が戻ってくる可能性は低そうだが、他に自分のようなやる気の人間がいるとすれば、一刻も早く排除しなければならない。神童に割く時間はないのだ。
けれど神童は、ずっとチームを導いてくれた存在。その神童が最期に自分と話すことを望んでいる……。
「遺言ってやつか? ……それくらいなら聞いてやる」
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紅蘭 - 続き楽しみにしています!更新頑張ってくださいね! (2020年5月3日 20時) (レス) id: c9c79794b0 (このIDを非表示/違反報告)
浜野鶴正 - 更新お願いします (2018年7月28日 1時) (レス) id: 76900bd172 (このIDを非表示/違反報告)
常連客 - 頑張って下さい。面白いですね、○し合いなのにグロ要素が無いという全年齢対象で、とっても良いと思います。浜野防弾チョッキって最強(?)じゃん・・・;; あれ?倉間ってナイフじゃなかったっけ??・・・・・あ!水鳥のか・・・www (2015年5月27日 10時) (レス) id: e00034d299 (このIDを非表示/違反報告)
モブ子 - 面白いです!浜野がなにげに生き残りそうです…更新頑張ってください! (2014年12月14日 15時) (レス) id: 9b39510a3b (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 続きが楽しみです! (2014年11月14日 22時) (レス) id: 41ef129427 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ココナッツ | 作成日時:2013年5月7日 17時