18 ページ18
帝国学園との試合当日。
『失礼しました』
白石は教室の入り口で一礼すると、教師の目がないことをいいことに早足で廊下を駆けた。
1週間前から試合を予告していたにも関わらず、このタイミングで個別面談が入ったことに対して、教師も仕事だということを理解していたが、思わず舌打ちをひとつ。
対戦相手は既に到着しているらしく、校舎内に残っている生徒が「観に行こうぜ!」と玄関に足を向けていた。白石はその生徒達を追い抜き、靴をスパイクに履き替えるとそのまま部室に駆け込んでいった。
そして数分もしないうちに部室から出てきた白石が纏うのは、背番号77の雷門のユニフォーム。この数字は白石がサッカーをする上でのアイデンティティとして大切にしている背番号だ。
白石がグラウンド脇につくと、帝国はアップを済ませた後だったようで。ベンチ周りに固まっていた。
多大な違和感を感じた白石は周りを見渡したあと、嘘だろ、とため息をつく。
先にアップやらなんやらを済ませていると思っていた、肝心な仲間達が居ないのだ。
ビビって逃げたわけではあるまい、と辺りを見渡せば校舎内に円堂の姿が見える。逃げたわけではないらしいのでとりあえず安心するが、どうしてあんな所に。
『木野さん』
「あ、白石くん!間に合ってよかった」
『俺は間に合ったよ……俺は、ね?』
「あぁ……」
此処に居ない彼等の事を思い浮かべて、木野は苦笑いを浮かべた。
「壁山くんを探しに行ったの。トイレに行くって言ったまま、帰ってこなくて……」
『ああ、なるほど』
「白石くんは行かないの?」
『すれ違いになったら嫌だし俺は此処に居るよ。
それに、木野さんもひとりじゃつまんないだろ？』
純粋な笑顔を向けられた秋は、少しだけ頬を染め、なにも言えずに頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：-naki-
x他1人 | 作成日時：2018年5月28日 20時
