人間洗浄機７

日常220　ようこそ彼の愛するブクロへ ページ8

＿＿イケブクロディビジョン。やらなければやられちまう。だったらやられる前にやっちまえ。そんなきな臭い奴らが目をギラつかせ生き抜こうと藻掻く街


「一郎、今日路上で歩きながら歌ってたらしいじゃん。」

夕食を食べながら少女が一郎に話しかける。
実は本日、一郎はゲリラライブ的なものをしていたらしく、SNSに動画が数多く投稿されていたのだ。

「あはは、後からこうしてみると恥ずいな…。」

一郎は苦笑いで食事を食べ進める。

「そうですか？一兄かっこ良かったですよ。」

「そーだよ、兄ちゃん！かっこ良かったぜ！」

「だそうですよ？兄ちゃん？」

曇りなき眼で一郎を褒めちぎる二郎と三郎。
それに照れて顔が赤くなる一郎を覗き込みながら少女はくすりと笑った。

山田家の食卓もこうして考えると、会話の話題が増えたように思う。
今までは二郎と三郎が喧嘩していたかラップの話ばかりだったのだが、少女が現れてからは、くだらない日常会話が増え＜家族の会話＞に近づきつつあったのだ。

楽しそうに会話を進める少女・二郎・三郎の姿を見て、一郎は微笑むのだった。


＿＿翌日。

＿prrr…prrr…

少女が今日の大学の講義が終わったので家に帰ろうとしていたところ、突然携帯が鳴りだす。
少女が画面を見るとそこには
＜山田一郎＞の文字が。
取りあえず電話に出ることに。

「もしもし？」

「お、急にわりぃな。実はよ…」

電話の内容はこうだ。
本日、一郎はあるクライアントからの依頼を終わらせたため、結果を報告するためにとある喫茶店に行ったのだが、そこで、

『大変だったでしょ〜？取り返してくれてありがとうね。ありがとねぇ。はい、これ報酬！ちゃんと入っているから。』

そういってクライアントは一郎に茶封筒を渡す。
すると、

『…！？』

クライアントからの＜気持ち＞である大量のスイーツが目の前に。
＿一人じゃ食いきれねぇだろ…。


と、いうわけで、

「1人じゃ食いきれねぇんだ。今から来れねぇか？」

「あ、待って、私多分その喫茶店の前にいる。」

＿一郎、右見て〜。右！

言われたとおりに一郎が右を見ると、店内の窓の向こうには手を振る少女の姿が。
一郎は少女を見つけた途端に表情が緩み、片手を上げる。

＿カラン…カラン…

「わぁ…この量は…一郎1人にはきついねぇ。」

「だろ？」

少女が一郎の前に座り、スイーツに手を出そうとした瞬間、

＿ガッシャン

窓が割れた音と、女性の悲鳴が聞こえた。

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