＊ ページ42
いづれ、
別れはやってくる。
この日記帳が
どんどん言葉で埋め尽くされていく度、
それを実感する。
パラパラとページをめくれば、
懐かしい思い出の日々が、綴られていて
時々、フッと笑ってしまうような。
私にとっては、
輝かしすぎる、思い出。
「お前さん、よう分からない女じゃのう。」
「それは仁王くんには言われたくないです。
で、今日はどういったご要件で？」
変わり者の仁王くんは、
ここ最近、よく図書室へと足を運んでくる。
日記を眺めている私を見ると、
呆れた表情をして、いつも、同じセリフを言う。
「お前さん、知ってるじゃろ？
柳生が、此処の大学へ行かないことを。」
「勿論知っているよ、仁王くん。
柳生くん、そのこと前に話してくれたもの。」
将来、医者を目指す柳生くんは、
医学部の方へと、進学する。
だから私に先月、
教えに来てくれたのだ。
「悲しい奴らじゃな。」
「どういう意味？」
言葉の意味がわからなくて、
仁王くんに視線をやると、視線をそらされた。
まるで、「何も教えない。」と言うかの様に。
仁王くんはきっと、
私が柳生くんとやり取りできないことを
悲しい。そう言っているわけではない。
そうではなくて、
また違うことについて、
彼は哀れんだ感情を、私に向けるのだ。
「…そうだね、
仁王くんからすれば、悲しいかもしれないね。」
口で交わして、文字で交わして。
それは何処か、
逃げ道のように、はけ道のように。
いくら真実を語っていたとしても、
そこには何処か「偽り」を持っていて。
語りきれない何かは、
思い、留める。
「柳生も柳生で、
何で気づかないかのう…。」
俺の背中は押しておいて、
自分のことは放り投げて。
つくづく、呆れる男じゃき。
ジェントルマンなら、
女の子と、泣かせたらいかんじゃろうが…。
「仁王くん！
また貴方はこんな所にいたんですか？！」
「見つかってしまったナリ。
仕方がないのう…」
「全く、行きますよ！」
仁王は適当に受け流しながら、
図書室から出ていく。
失礼しました。と挨拶をした柳生は、
小野寺と視線が合う。
それに気がついた小野寺は、
軽く会釈をした。
「じゃあね、柳生くん。
部活、頑張って。」
「ありがとうございます、小野寺さん。」
ほんの一瞬だけ見せた切なげな表情に、
ただ、笑うことしかできなかった、
無力な自分＿
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作者ホームページ：なし 作成日時：2015年10月25日 21時
